機材よりも大切なこと。
コミュニケーションの交通整理
──機材以外で、リモート撮影の現場においてどんな課題が考えられると思いますか?人材や時間の使い方など、変わってくるんじゃないかと想像します。
コミュニケーションの交通整理が課題になるでしょう。オンラインのコミュニケーションにおいて、誰が意見をまとめて、現場に返すのか?というのを、同時に考えていく必要があると思います。
──ファシリテーターが必要なのか、ワークフローのような「型」が望まれているということですか?
広告主によって文化って様々ですので、ひとつのルール「型」で対応するよりも、ファシリテーター、まさにそういうことだと思っています。僕は言葉を変えて「試写芸人」と呼んでいます。今までも、クリエイティブ・ディレクターさんや代理店の営業さんがユーモアも交えながら、コミュニケーションを上手く転がしてくれる現場はすごくスムーズに進んできましたが、リモートではより意識的になる必要があるかと思っています。
──ありがとうございました。「松竹梅+基本アイテム」を網羅して、解説いただきました。中でも撮影再開を切望しているのが、中小プロダクションだと思います。その立場に立ったとき、格内さんならとどれを選びますか?
当然、ZoomやYouTubeライブ配信といったサービスに頼らざるを得ないと思うのですが、僕のスタンスとしては、ひとつの選択肢しかもってないと、八方塞がりになってしまいますよね。どちらかに経済が大きく揺れ動いた時、パニックになって思考停止に陥いらないように、ヘッジの考え方をもっているかどうかが、大事かなと思います。
──そのヘッジが、撮影ソリューションをリサーチし、さらには「松」のQTAKEを自ら購入し、必要な人にサービスを提供していこうとしているということですか?
はい。資金力のある大企業に向けてQTAKEのサービスを提供するのではなく、むしろ、高額のツールを使えない案件に対して、実費程度でこのサービスを提供したいと思っています。そもそも、僕の本職であるオンライン編集というのは、撮影が再開されないかぎり仕事が回ってきません。経済学者ジャック・アタリ先生も、「利他主義というのは最も合理的な利己主義だ」と言っています。
──最後に、映像業界において、ニューノーマル時代にむかう流れと、これまでの日常に戻ろうとする二極の間で、揺れていきそうに見えます。
日本においては「致死率も少なく、感染者数や死亡者数も少ないから大丈夫」という空気感もあり、なし崩し的に撮影が始まる可能性ありますよね。しかし、今後もこのパンデミック波は来るかもしれません。リモート編集の知見を溜めておくことは、繰り返しになりますが、広告主さんは安心して広告に投資できる環境を生み、制作者サイドも現場再開まで最短距離でいける策を知っているということです。それって大事なことだと思うんです。日本の映像業界に格差を生まないための一助となればと願っています。
──ありがとうございました。NEWREEL.JPでは、引き続きWithコロナ時代のフィルムメイキングをテーマに第二弾は「表現」について取材を予定しています。どうぞ、お楽しみに!