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Feature

Get Creative! Withコロナ時代の広告表現ってどうなる?
#2クリエイティブディレクター座談会。
feat. 瀧澤慎一、東畑幸多、原野守弘、藤井亮

kana kana Jun 18 2020

Withコロナ時代に「広告表現はどうかわっていくのか?」をテーマに、今の日本を代表する4名のクリエイティブディレクターによる座談会。未曾有の危機を体験した私たちの日常からは、今後消えていくものや生まれていくものがあるだろう。では、映像コンテンツ産業のなかでも、動くお金も大きく、リーチのインパクトも高い、広告(CM)表現においてはどうなるのか?広告の企画そのものを担当するするクリエイティブディレクターのみなさんに、現在感じていることや未来予想図を語っていただいた。

企画協力
Takeshi Nakamura (Caviar), Shinichi Takizawa (僕とYOU)
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左上)瀧澤慎一|クリエイティブディレクター/CMプランナー|僕とYOU代表、右上)藤井亮|クリエイティブディレクター/映像作家|豪勢スタジオ代表

左下)原野守弘|クリエイティブディレクター|もり代表、右下)東畑幸多|クリエイティブディレクター/CMプランナー|株式会社電通

自粛期間中に起こった心境の変化。
広告ってそもそも不要不急!?

──本日は、5月26日。緊急事態宣言解除が出た翌日にこの座談会となりました。まずは、ここ最近の自粛生活で考えたことや、みなさんの近況をお聞かせください。テレビCMをはじめ、9割近くの企画が中止または延期の状況だと聞いています。

原野:自粛が始まってすぐ「不要不急」という言葉が流行りました。その時、広告は不要不急か?という大きなテーマを与えられたと感じました。悲観的になると「この先もずっと広告は不要不急なのではないか」、「市場自体が小さくなっていくのではないか」と考えたり。広告はメディアを収入で支えることで“言論の自由を守っているんだ”という矜持はありました。しかし集中治療室で格闘する人々を目の前にしたとき、たしかに広告の不急度合いは大きく感じられる。不要不急という基準で判断されてしまうと、僕らは何も言えなくなってしまうなという怖さを感じました。

藤井:妻が医療従事者なんですが、彼女が医療業界に身をおいて日夜働いているのを見ていると、僕ら映像業界や広告業界の仕事っていうのは、いい意味でも悪い意味でもチンドン屋さんでしかないなっていうのを、ひしひしと感じました。まあ、家庭内の僕のポジションもチンドン屋なんですけどね。そこを無理して、いい人のふりをしなくてもいい、社会の役に立ちたいけど、何かやるのも嘘くさいとおもって、モヤモヤしていました。みんながみんなソーシャルグッド広告でカンヌの賞を狙えそうなことするよりも、素直にチンドン屋で稼いだお金を募金する方が…。とかとか。

瀧澤:僕は、何かしないと、何か言わないと、という焦燥感を、はじめの頃はものすごく感じていました。過去に着ぐるみパフォーマーとしても活動していたので、ライブエンターテイメント業界の役に立てないか企画を練ったりしてたのですが、だんだんと3人いる子どものことを含め、まず目の前にあることをきっちりやることの大事さに気持ちが傾いていきました。このタイミングに特別なことを発信しようとするより、自分が本当になすべきことは何かを考えながら、日々を淡々と過ごすようにしていました。

東畑:時間ができて、少し仕事から距離をとったことで、はじめて客観的になれましたね。これまでは、目の前の仕事に忙殺されていましたが、立ち止まらざるを得ない状況が訪れた。朝起きて、窓を開けて、星野道夫さんの本を読む。普段だったら、そんなこと絶対にしない。以前は、流れゆくフロー型の情報ばかり見ていたのが、普遍的なストック型の情報にも触れるようになって。自分たちの仕事を客観的に見るようになりました。

──広告主とは自粛期間中も打ち合わせを続けていらっしゃいましたか? その場合、どういう会話をされたんでしょう?

東畑:できた時間を使って、「特にテーマはないですが喋りませんか?」というZoom会議をしていました。平時ではなかなか出来ない、ブランドの存在価値は何なのか、今の時代にどう役立っていけばいいか、といった本質的な会話ができました。また、Zoomでオリエンされると、クライアントのオフィスではなく、家で聞くので、ちょっと冷静になれる。例えば、CM調査の「ここのスコアが低い」みたいな話って、世の中からすると課題でもなんでもない。エッセンシャルか、エッセンシャルじゃないか、って言い方は好きじゃないですが、今まで課題だと思ってきたことは、本当は課題とは呼べないものだったことを、僕らもクライアントも一瞬気がついたんじゃないかなって思います。

原野:いいリセットの機会です。こういうことでもなければ社会全体でリモートワークを実行することなんてなかったわけです。海がきれいになったり、空気が澄んだり、東京の満員電車が解消されたり、当たり前になり過ぎて誰も課題視さえしていなかった大きな課題が、突然解決してしまった。それを生かさないでどうすると思いますね。昨日もニュージーランドの首相がこれを機会に週休3日制度を推進しようとしていると報道が出ていましたが、そういう方向の議論にいったほうがいいんじゃないかと思います。メディアは、キャバクラはいつから再開するのか?とか、スポーツジムはどうなるのか?というような近視眼的な話ばかりしているような気がします。そうじゃないだろうと思うんです。

東畑:企業も個人も、世の中に自分をどう役立てるかを、もう一度考え直すいいキッカケになるといいなと。例えば、キャッシュレスの競争も、「30%還元!」とか「だったらうちは半額還元!」みたいなお金をばら撒くことで、シェアの奪い合いをやってきた。けど、お金は本来「社会の血流」だと思うので。Uber Eatsとか食べログと組んで、テイクアウトに対して還元していく、みたいなことを考えれば、飲食店の人をエンパワーしながら、ブランド価値を上げていくこともできるかもしれない。自分たちのビジネスの足元は何だったのか、そういう議論をできるチャンスだなと思います。

──藤井さんはアニメーション作品のお仕事が多いですが、仕事において環境の変化はありますか?

藤井:仕事は、実は全然変わらない。コロナ以前から、個人的で、狭い世界のものを作ってきているので。今、制作中のコマ撮りアニメも、この事務所で自粛期間中もずっと撮影を続けています。ただ、制作スタッフが来られなくなってしまったため、照明やセットの移動もすべて自分でやらざるを得ないわけで、だんだんと自分が何屋さんかわからなくなってきています。それを除いては、緊急事態宣言が出る前からずっとこういう生活をしていたので、仕事面においてはコロナの影響を大きく受けてはいないんです。

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