NEWREEL
Feature

Get Creative! With コロナ時代の映像制作
#1リモート撮影の松竹梅
feat. 格内俊輔氏(オンラインエディター)

kana May 29 2020

緊急事態宣言が全国で解除され、”コロナ対策のお手本”と話題になったニュージーランドでは、来週にはアバターの撮影がいよいよ再開するとの報道が。気持ちを明るくしてくれる一方で、Withコロナ時代の”ニューノーマル”、”新しい日常”に対応した制作スタイルや、マインドセットを考えていくことも必要だ。NEWREEL.JPでは、「Get Creative! With コロナ時代の映像制作」と称し、With コロナ時代の映像制作のヒントを、クリエイティブにみんなで考えていきたい。初回はオンラインエディターの格内俊輔さんを迎え「リモート撮影の松竹梅」をテーマにお届けします。

企画協力
中村剛(Caviar)
FacebookTwitterLinePocket

松:現時点でのベストソリューション
QTAKE

最後の松です。QTAKE、現存するサービスの中では最強ツールといえるでしょう。ネットゲームのMMORPGで例えるならば、神器、聖剣「エクスカリバー」的な最強武器だと、僕は認識しています。竹と比べても圧倒的に別格と思ってもらっていいでしょう。

ハリウッドでは、すでに多くの作品で採用されています。


(引用元:QTAKEオフィシャルサイト

QTAKEは、現場で元々プレイバックしたり、撮影素材を管理するためのソフトとして開発されました。例えばテイク1、テイク2,テイク3があったとして、監督さんが「3つ前のテイク見せてください」って時に、このQTAKEを使って、映像の出しをする。データ管理に特化したソフトなんです。QTAKEは、ライブストリームというサービスを実は持っていて、ものすごくいい回線を買い占めているんでしょう、あまりにも早すぎて、このライブストリームが今の所、最高画質、最低遅延を叩き出しています。遅延は1秒以下なので、ほぼリアルタイムでのやり取りができます。ある監督さんと話した時、海外ロケですでに使ったことがあると言っていました。

──たしかに、アメリカだとしても国内で時差があるくらい広大ですから、リモート環境もある程度整っているんですね。

日本ではこれまでその必要がなかった、というだけです。今、日本には40台位あると聞いています。

──TERADEKと違って、ひとりぼっちではないんですね。

はい、これに関してはひとりぼっちではないです。ただ、マニアックなDITのツールなのでちゃんと使いこなせる人はまだ少ないとも聞いています。体感レベルの話ですが、撮影現場でQTAKEに遭遇する確率は3割程度。

──しかもライブ配信用ではなくて、プレイバック装置として使われている3割ですよね。

その通りです。ライブストリームの事例は、まだ聞きません。しかし、これから使われる可能性は高いでしょう。それくらい安定性と速度性は担保されています。

その分お値段も張ります。本体と付属品含めるとだいたい200万円位かかります。

──一気に桁が変わりました。

はい、それに加えて通信費がかかります。

──通信費ってどのくらいかかるものなんですか?

目安ですが、丸一日の撮影で、だいたい10人~20人への配信を想定して、5万~10万弱で考えてもらうといいですね。QTAKEのサイトでシミュレーションができるようになっています。


こちらのシミュレーション機能は、会員専用サービス

そう考えると、予算が100-200万円のMVといった、ローバジェットで使えるかって言うと、可能性は低いわけです。広告案件だと予算にハマるかもしれませんが、国内には限られた数しか無いので、取り合いになる可能性も考えられます。もしくは、このままコロナが記憶から消えて、なし崩し的に撮影が再開するかもしれないですが、第三波、第4派を想定して、こういうテクノロジーにも取り入れていく企業もでてくるでしょう。

──この「某プロデューサーが購入」というが気になるのですが・・・。

これが実はポイントだと思っているんです。あるプロデューサーが早速購入したのを見て、賢いな、と思ったんです。このコロナ禍を契機に、広告主直で制作会社が仕事を請け負う動きが増えると予想されます。そういうシチュエーションで、プロデューサーがQTAKEをもってるとどうなるか?ストリームライセンスが日本に20台くらいしか無いとなると、自分の現場で使えないケースが生じちゃうんです。それって不安要素になりかねない。このプロデューサーはQTAKEを持つことで、自分の現場では100%QTAKEが使えるという状況を作っているんです。うちはQTAKEがあるから、安心してリモートでご確認いただけますよ、というわけです。プレゼンの強力な武器となりえるという判断なんですね。こういう時の、大企業や政府は体力がある分、「これまで通りに復帰するまで、様子を見ましょう」と、判断が出遅れていってしまう傾向にあります。

──QTAKEは、”自宅現場オフライン”もできるんですか?

今の所はモニターのみです。面白いのが、QTAKEはもともとプレイバックに特化したソフトなので、視聴者が自分のアプリ上で、テイクを自由に見ることができます。カメラからQTAKEにインプットされた映像が、ライブで配信されるのですが、クラウド上に各テイクが保存されていて、そこに自由にアクセスでききます。これに関しては、演出側は、全テイクを見せたくない場合もあると思うので、そこは懸念ポイントになりえます。

次のページ機材よりも大切なこと。コミュニケーションの交通整理

Latest

VIEW ALL