NEWREEL
Feature

コムアイとオオルタイチが奏でる魂の旅を追体験。
WEB上に出現した瞑想的インタラクティブライブ
「YAKUSHIMA TREASURE ANOTHER LIVE from YAKUSHIMA」
クリエイターインタビュー!

kana kana Mar 23 2021

現在WEB上にて公開されているインタラクティブライブ「YAKUSHIMA TREASURE ANOTHER LIVE」。デジタルを使った最先端表現にして、人間の最も深いところにダイブするようなエモーションを掻き立てる。表現のコアを担った映像監督辻川幸一郎、Dentsu Craft Tokyoプロデューサー山下誠、その入り口としてキービジュアルとWEBデザインを担当したアートディレクター坂本政則に、本作の舞台裏を語ってもらった。演出と技術の相関、魂とデジタル表現の因果報応の法則とは?

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本編の世界観を増幅させる
アートディレクション


坂本氏によるキービジュアル。「アニメの交響詩篇エウレカセブンでも起用していた、ニュー・オーダー、セカンド・サマー・オブ・ラブなど、舶来のアーティストや楽曲、事象などを”カタカナ表記+単語間に中黒(なかぐろ)”表記をする音楽カルチャーリスペクトなムードを狙っています。」(坂本氏)

──アートディレクションを担当された坂本さんは、このプロジェクトに対してどのようなアプローチを考えましたか?

坂本政則(坂本):ボクが参加するタイミングはプロジェクトのかなり後半で、チームの中であらゆる可能性や検証を経て撮影/録音が完了し、さあこの材料をどう料理しましょうか?という段階でした。ですのでボクのこのプロジェクトへの介入率は2%程度なのかなと。逆に言えば、一歩引いて俯瞰して眺められる立場でもありました。ですので、これまでチームが検証、決定してきた方針とはまた別のアプローチでの提案をさせていただきました。例えばフォトグラメトリーによって所得したテクスチャの貼り込み方法とその動的な演出であったり、移動するカメラの焦点距離を可変させながらピントを保持するといったことなど。ただし前提として、ボクが想像する辻川さんの引き算していく演出とはミスマッチだなとも感じていたので、アイデアは素直に伝えつつも、辻川さんの見ようとしているビジョンの中で落とし所を探っていきました。

その他には、マウスに追従する”魂”の表現に関して、「発光する球体」が最もミニマムな着地と想像の上、別アプローチとして手描き線がクシャクシャと変形し続けるモチーフを「思考する有機体」として本編に合成することで、ポイントクラウドのルックとほどよい質感の差異が発現しそうだなと思ったんですね。オシロスコープで音に合わせて波形がクシャクシャと変形する動画や、「海獣の子供」のあるシーンなどのリファレンスで説明したのですが、偏愛度高いフェチな部分が辻川さんに響き、好感触だったのは内心すごくうれしかったですね。(編注:過去にインタビューしたMimoidのロゴもオシロスコープを着想とし坂本氏によりデザインされたもの)。その方向で公開ギリギリまで精度を追い込んでもらっていたのですが、結果的には良い着地にたどり着けず割愛することになってしまいました。

──観客との最初のインターフェイスとなるトップ画面も、まるで本編のトレイラーのように世界観が伝わってきます。

辻川:本編上で表現できなかった”何か”を、坂本さんはシャープに切り取ってくださった。

坂本:トップ画面のポイントクラウドに関しては、カメラワークがダイナミックに切り替わり、回遊させることができるリアルタイム版を演出的に起用できれば、ライブが始まるまでの待機中のムードがうまく作れるのではと、チームで検討していきました。ボクがこのプロジェクトから想起した、地球と生物の共存、ふるまい、輪廻転生、躍動、美しさ、厳しさ、畏怖なども感じてもらえたらなと。

──タイポグラフィの面が結界のようで、その向こうのあちらの世界の存在を感じます。

坂本:書体は骨格そのものに人々の歴史的な年輪を感じさせるゴシック体をと考え「TypeBank味岡伸太郎かなシリーズ」の「築地」を採用しました。味岡氏も書体解説にて「骨格は民族の歴史の中に流れ続ける本質的な姿であると考えたい」と記述しています。併記する欧文はゴシック体のカタカナのムードに寄り添う程度のキャラクター性にとどめ、輪廻転生、円環にかけてサイトをぐるっと一周するレイアウトとしました。究極的には、”殯舟“を中心としたガジュマルの木々からなる世界+文字要素のレイアウトそのものにより、特異なオーラをまとった印象表現ができれば成功かなと考えました。

──その中で揺らめくラインがまるで生き物のようです。先述のオシロスコープアニメーションのアイデアが根底にあるように思いました。

坂本: オシロの延長線上の表現の一つですね。手描きのような印象のたゆたう細い線は、生物のふるまい、つながり、流れ、鼓動を想起させるものとして演出的に加えています。大自然の生命力そのものに直面した時、美しさと同時に怖ろしさを感じますよね。それとは対象的に、人や動物の命の儚さも感じたり。自然の流れに応じて形を変化させ続ける生命や、有機体である動植物の動きの軌跡のようでもあり、人が、民族が、生きるための手仕事のようでもあるという、生命の糸的な印象を与えるのが狙いです。

山下:それは面白いですね。と言うのも衣装のBEBEさん(渡辺慎也氏)がおっしゃっていたことにリンクするんです。BEBEさんが作った衣装は、屋久島の泥で染めた布をぐるぐると体に巻いて作っています。そして衣装の一端は船に結び付けられていて、命の糸が大地とつながり輪廻転生観を意味していると聞きました。坂本さんはその糸の話を知らないはずなのに。

坂本:このプロジェクトでは、誰に言われたわけでもなく、それぞれが個別に考えた表現がオーバーラップし、調和し、集合体が形成されている印象がありました。トップの輪廻転生を想起させるタイポグラフィーは、本編の構成そのものであり、UFO琴(楽器)ともつながっている。コンセプトと手法がほどよく溶け合っています。

生命の儚さや、自然の法則、人の手仕事の軌跡、輪廻転生などを想起させる”たゆたう線”。

──デザインにおいて坂本さんなりの哲学的なものがあれば教えて下さい。

坂本:一つは、視覚+言語情報(他周辺要素)からなる複合体に対して、高い精度で構成要素のバランス調整を施し、人の無意識下にある感覚的な部分への伝わり方、つまり、印象を顕在化させること。二つ目は、時代によって変化していく閲覧環境や慣習、ユーザー体験を軸に、前述の「顕在化した印象」からユーザーインターフェイス(UI)+コンテンツに対して抽出可能な要素を、題材によりバランス調整しながら浸透させることで、時代性や使い心地だけではないものを獲得できるのかなと。その方法論をもって初めて、ロゴをはじめとしたグラフィックデザイン、映像、UIから空間デザインまで、あらゆるモノがそのデザイン対象の独自性を体現しうる存在になるのかなと思っています。

近年、マクロ視点でノウハウを発信する人たちの存在と与える影響により、ある特定の方法論だけが重要視され、それ以外の可能性が少しづつ消滅していくような感覚を覚えるのです。SNSなどを駆使し、知見をノウハウとして共有していくことは、コモディティ化が加速し、作り物の質の底上げをする側面では大変有効ですが、例えば、純粋な気持ちで学びたい人々に対して「これが正しい」と伝えると、それ以外の可能性が思考対象から除外されてしまう危険性もあるのですよね。デザインはそんなに単純なものではないし、だからこそ”多様で奥が深くておもしろい”側面こそ広まって欲しいのです。

──それはデザインに限らず広い場面で同じような現象が起きていると感じます。

坂本:このプロジェクトにおいても、意識的に多様なデザインのひとつとして試みているところはあります。

辻川:坂本さんがWEB上で表紙として作ってくれたデザインには、制約を取っ払って、この辺が一番気持ちいいんでしょって、僕たちが見たかったもう一つの世界を、まさに作ってくれたと思います。

坂本政則(アートディレクター)

新しいエンターテイメントとは?
そして心を揺さぶる要素って?

──このプロジェクトを通して「これからの新しいエンターテイメント」のヒントや発見はありましたか?またデジタル/アナログ関係なく、心を揺さぶるものとは何なのか、お考えがあれば聞かせてください。

山下:私は学生の頃から24歳くらいまで演劇をやっていたんです。役者を目指して上京して道半ばで挫折…というバックグランドがありまして。今でも演劇を観るのは好きで、演劇での体験が根底にあってモノづくりの仕事をしています。演劇って脚本はありますが、映画とは違って、何を観るかは観客に委ねられる。何を見てもいいし、なんなら見なくたっていい。自分で見るものを取捨選択できるコンテンツに魅力を感じていて、視点を解放することが私のテーマだったりします。人の心が揺さぶられるものも、その延長線に存在するんじゃないかって考えています。

坂本:リアルな空間で実施/体験できることに制限がなされ、気づいたらあっという間に1年経ってしまって2020年どこいった?という感覚なのですが、痛感したのは、創作や文化的な活動、関連施設などに多大な影響を及ぼしたということ。リアルな空間で体験することを前提に作られたものが、画面でしか体験できないとなった時、質はたしかにスポイルされてしまうのですが、作品そのものの絶対的な強度があれば、その強さは普遍的なものとして保持されると思います。そういう意味でも、作り手の並々ならぬ想いが作品自体に如実に反映され、突き抜けているものに触れた時、めちゃくちゃ高揚します。そういうものにできるだけ多く出会いたいですね。いずれにしても記録や配信、視聴に使われる機材や技術面の発展は望まれるところだとは思います。

辻川:このプロジェクトで言うと、配信と展示という2つの概念を僕らは持っていました。ライブ体験でいうと、ポイントクラウドVR。魂が知覚している世界を目の前に立ち上げるっていうことですね。目の前に広がるガジュマルの森に浮かぶ船。その上で彼女たちが演奏をしていて、観客は自由に船の真ん中で聞いたり、アーティストに重なったりできる。それだけで成立するのではないでしょうか。その時にやっぱり貼り付けられた映像ではなく、ポイントクラウドのデータというのが肝となります。

──お話を聞いているうちに、エンターテイメントの世界も、わたし達の日々の生活も、見えないものを見るというところに、大きなヒントを感じました。ありがとうございました。

YAKUSHIMA TREASURE ANOTHER LIVE from YAKUSHIMA

公開期間:2021年2月11日〜3月31日
ライブチケット料金:500円
視聴環境のスペックや詳細は公式サイトから
公式サイト:https://another.yakushimatreasure.com/ja/

辻川幸一郎 / Koichiro Tsujikawa
映像作家。日常の中でふと浮かび上がる妄想や幻覚を、子供の手遊び感覚で映像化する。CorneliusをはじめとしたMVや、CM、ショートフィルム、インスタレーションなど様々な分野にわたって国内外で活動中。記憶と感触を刺激する映像世界は高く評価されている。

山下誠 / Makoto Yamashita
クリエーティブチームDentsu Craft Tokyo プロデューサー。鹿児島県桜島出身。演劇活動のため上京し、劇場勤務などを経て、2014年に電通クリエーティブXに入社。映像コンテンツ、スマホアプリ、インスタレーションのプロデュース、R&D案件のプランニング兼プロデュースを行うなど、自由視点でものづくりを行う。

坂本政則 / Masanori Sakamoto
Neuf inc. 代表/アートディレクター/デザイナー。1972年静岡生まれ。2009年にDELTRO、2019年にNeufを設立。VI/CI、タイプフェイス、グラフィックからインタラクティブ〜立体まで、ブランドが必要とするすべてのデザイン領域において、包括的なアートディレクション及びデザインを行う。ADC、カンヌ国際広告賞、One Showなど、国内外で受賞多数。

kana
bykana

NEWREELの編集者。コツコツと原稿を書く。