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今年のジョン・ルイスのクリスマスCMは、
クリスマスが好きすぎるドラゴンと優しい街の人々との物語

金井哲夫 Dec 4 2019

みんなが心待ちにしていたジョン・ルイスのクリスマスCM。今年はクリスマスが大好きでたまらない子どものドラゴンのエドガーくんとその親友のエイバちゃんのクリスマスの物語。

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adam&eveDDB
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台詞がないこのストーリーの解説は野暮だから止めておく。これはクリスマスが大好きでたまらない子どものドラゴン、エクサイタブル・エドガー(はりきりエドガー)くんと、その親友のエイバちゃんのクリスマスの物語。毎年、感動的なクリスマスのショートフィルムを発表して大変に話題になるイギリスの大手百貨店チェーン、ジョン・ルイス&パートナーズ(今回から食品スーパーのチェーン、ウェイトローズ&パートナーズも共同)の今年のクリスマスCMは、これまた期待を裏切らない大作に仕上がっている。

企画したのは、昨年エルトン・ジョンの半生を題材にしたクリスマスCMも手掛けたロンドンのエージェンシー adam&eveDDB。監督は、これもジョン・ルイスのクリスマスCMを何度も制作しているドゥーガル・ウィルソン。去年の9月に放映されて大評判になった、ジョン・ルイスのボヘミアン・ラプソディーを題材にしたCMの監督もこの人。

上のメイキング動画では、adam&eveDDB の最高クリエイティブ責任者のリチャード・ブリム氏は、このクリスマスCMのために年間300から400本の脚本が集まると話している。それだけでも驚きだ。このエドガーくんの話は、前からみんなが気に入っていたものだという。ただ、エンディングが決まらなかった。そこへ、ジョン・ルイス傘下の食品スーパーチェーン、ウェイトローズがCMに加わることになり、ウェイトローズの「クリスマスはみんなで過ごすものだ」という提案から、話に命が吹き込まれたとのこと。

エドガーは、脚本では子どものドラゴンとしか書かれておらず、クリエイティブ・ディレクターのディアミッド・ハリソン・ムリー氏はまず、ドラゴンを生き生きとしたキャラクターに仕上げる作業に入った。どんな姿をしていて、嬉しいとき、悲しいとき、エキサイトしたときはどんな表情になるかなど、無限の可能性の中で模索した。そこでは、紙と鉛筆での作業が大変に効果的だったという。

撮影は8月にブダペストで2週間をかけて行われた。登場したエキストラはおよそ100名。そのセットの大きさ、エキストラの人数、徹底的なディテールに、セットに入るたびに驚いたとスタッフは話している。推定制作費はおよそ1億4000万円。キャンペーン全体は10億円近い規模で、テレビスポット、店頭ディスプレイ、エドガーくんグッズなどの費用がこれに含まれている。また、ジョン・ルイスとウェイトローズは、このキャンペーンの一環として恵まれない人たちに食事を提供する慈善団体におよそ2000万円を寄付することにしている。

これは、1年の間にギスギスしてしまった人間性を心温まるクリスマスCMでリセットしようという、イギリスの現代的な新習慣だと言える。日本にもぜひ、こういうのが欲しいね。

2016年にウィルソン監督が最初に制作したジョン・ルイスのクリスマスCMはこちら。

雑誌編集者を経て、フリーランスで翻訳、執筆を行う。

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