イギリスの大手百貨店チェーン、John Lewis & Partners と、その同系列の食品スーパーのチェーン、Waitrose & Partners との共同 CM。テレビのほか、まもなく公開される映画「ボヘミアン・ラプソディ」の劇場(イギリス国内)でも上映される。
イギリスの小学校の学芸会。おきまりの下手くそな子どもの楽器演奏が終わり、退屈そうな父兄がパラパラと拍手をすると、会場は暗転。いきなりクイーンの「ボヘミアン・ラプソディ」の歌が始まり、父兄はびっくりする。
父兄の年代なら、これが人を殺してしまった少年の嘆きの歌であることは知っているはず。小学校の学芸会にはどうかしら、という戸惑いも見られる感じだ。
しかし劇が進行し、宇宙飛行士がこう歌う。「ママ、火星人を殺しちゃったよ」。すると火星人(ロボットの王)は「死んでないよ」と言う。ここで救われる。原作の歌のとおり、宇宙飛行士は自分の行為を後悔して、レーザー銃を捨て、人生が終わったと嘆く。
宇宙飛行士は火星人に捕まってしまう。「逃してくれ」と彼は懇願するが、火星人たちは「許さない」と叫ぶ。
ここは、原作の歌では少年を許すのか許さないのかを謎の人たちが論議する有名なパートだ。そこでは「ビスミッラー」という、イスラム教の「神の名のもとに」という意味の言葉が何度も繰り返される。劇では、子どもたちが「ビスミッラー!」と歌うと一瞬静かになり、客の女性にスポットが当たる。これは「あなたはどっち?」という問いかけなのか。
その後、地球からの救援隊が到着し、幕となる。
なんとも豪華で驚きの演出に満ちた学芸会だ。このCMは、John Lewis & PartnersとWaitrose & Partners の「パートナー」という考え方を伝えるもの。従業員はみなパートナーであり、お客様のことを自分のこととして考えることで、本当のサービスができるのだという。劇中、スポットライトを当てられた女性も、そこで劇に取り込まれることで、劇を自分のこととして考えるきっかけを与えられた、ということだろう。
CM と同時にメイキング動画も公開された。これも半分は John Lewis & PartnersとWaitrose & Partners の宣伝なんだけど、劇の監督を務める音楽の先生と、出演者と裏方を務めるすべての子どもたちが、みんなそれぞれの役割を果たすことで魔法が起きることを見せたかったと、クリエイティブ・ディレクターのポール・ノットは話している。なんと言っても、子どもたちの素顔が可愛らしい。このCMに出演している子どもの人数は、なんと82名。撮影は5日間かかっている。
CM の監督は、2006年と2008年にカンヌライオンズのブロンズ、シルバー、ゴールド賞を受賞したドゥーガル・ウィルソン。以前にも John Lewis の CM を手がけている。2010年の「Always A Woman」は、「一生あなたとお付き合いします」というコンセプト。2014年のクリスマス向けのCM「Monty the Penguin」は大変な人気を呼んだ。2016年のクリスマス向けCM「Buster The Boxer」は、「みんなが欲しがるプレゼントを」というコンセプトだ。どれも心が温まる優しい作品になっている。