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放映料30秒で6億円の枠に集結
2021年スーパーボウルCMのNEWREEL的チョイス5本

金井哲夫 金井哲夫 May 10 2021

毎年2月上旬に開かれる全米一のフットボールチーム決定戦「スーパーボウル」。今年も遅ればせながらNEWREEL.JPがこれぞと思うスーパーボウル2021のCMをご紹介します。

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2021年2月、アメリカのプロフットボールの王者を決めるスーパーボウルが、新型コロナの影響で、これまでで最も少ない2万7000人という観客数で開催された。毎年、このテレビ中継で放映されるCMが話題になる。平均放映料が30秒で6億円という桁外れなこの枠は、昔から大手企業が大金を投入して、有名人を起用したリッチなCMをぶつけてくるのが恒例になっていて、それもまたスーパーボウルの楽しみのひとつになっている。

というわけで、そのなかからNEWREEL.JPがピックアップした5本をまとめて紹介しよう。

アマゾン – アレクサ

まずは、毎年お馴染みのアマゾンの力作。アマゾンは毎年、スーパーボウル用にビッグスターを起用したCMを作ることでみんなの期待を集めているのだけど、今年の目玉は、4月から日本公開になる映画「ウィズアウト・リーモス」で主演を務めるマイケル・B・ジョーダン。ピープル誌が選ぶ「2020年に存命中のもっともセクシーな男」にも選ばれた、まさに旬の人気俳優だ。その他、「ファンタスティック・フォー」(ヒューマン・トーチ役)や「ブラックパンサー」(エリック・キルモンガー役)、さらに、「CSI:科学捜査班」、コールドケース 迷宮事件簿」などの人気テレビドラマシリーズにも多数出演している。

アマゾンのオフィスで、アレクサの開発スタッフが、新しい第4世代Echoを見て「完ぺきよね」とうっとり。
「これ以上アレクサに相応しいケースはない……」と言いかけて窓の外を見ると、そこにマイケル・B・ジョーダンの「ウィズアウト・リモース」のアドトラックが通りかかり、そこから彼女の妄想が始まる。
マイケル・B・ジョーダンがアレクサの「ケース」となって、彼女の自宅にいる。
「大さじ何杯かしら?」と彼女が聞くと「16杯だよ」とマイケルが答える。
買い物から帰ってきた夫が「誰だそいつは?」とマイケルに気づき、怪訝な顔をする。
「アレクサ、庭に水を撒いて」と彼女が命令すると、スプリンクラーが作動する。
「さっき撒いたところだよ。びしょびしょじゃないか」と夫。
ホームパーティーの最中に「アレクサ、灯りを落として」と彼女が命令すると、マイケルは早とちりして服を脱ぐ。
庭にいた夫は「灯りを点けろ!」といきり立つ。
「買い物リストにバスオイルを入れておいて」と命令すると、何かを予感したのか「やめとけ」と、夫はアレクサに命ずる。
バスルームをロマンチックにロウソクで飾り、バスオイル入りのお風呂につかった彼女がアレクサに「オーディオブックを読んで」と命ずると、マイケルは「彼の腕の中で、私は変わっていった……彼にキスをした……」と意味深な話を読み上げる。すると夫は、「風呂場を占領しないでくれ」と訴える。
マイケル(アレクサ)の虜になり、夫を完全無視する彼女……てな内容。

監督はウェイン・マクラミー。これまでもスーパーボウル向けのアレクサのCMを制作している。このCMは、YouTubeのオフィシャル動画の再生回数が7800万回を超える人気ぶり。

アンハイザー – ブッシュ

お次は、スーパーボウル向けCMで人気が高いほっこり系。バドワイザーとかミカロブとかメジャーブランドを抱える生産量アメリカ第3位のビール会社アンハイザー・ブッシュのもの。雨に祟られた結婚式、同僚の解雇、飛行機が飛ばない空港、旧友を偲ぶ2人、会議で意見を求められた女性、微妙な関係の2人、葬儀、オーケストラの公演終了後、金曜はデートだから出られないと言うウェイターに「ここに彼女を連れてこい」と冗談をかます同僚、雪をかぶったおじさんを「1杯やろう」と誘う若者。最後に「決してビールだけの話ではありません。一緒にいるということです」とテロップでジーンと泣ける。

アンハイザー・ブッシュがスーパーボウルにCMを出したのは、これが初めて。新型コロナからの経済的な立ち直りを支援するために、大小さまざまな人生の大切な瞬間を描いたという。そこにビールが一役買っているというメッセージだ。

バドライト・セルツァー – レモネード

バドワイザーは今年CMを出さなかった。その代わりに、セルツァー・レモネードが来た。レモンサワーみたいなもんだね。アメリカには「人生にレモンを渡されたらレモネードを作れ」という諺がある。レモン、つまり酸っぱいもの、つまり苦難を与えられたら、逆手に取って得をしろという意味だ。バドライトは、2020年の「レモン」な1年を逆手に取ってレモネードを作りましたっていうお話。

CMでは、文字どおり人々がレモンに襲われる。旅行やら野球やら散髪やら結婚式やら、実際にコロナの被害を受けた出来事が、レモンの仕業になっている。酸っぱい年だったからとバドライトが本当にセルツァー・レモネードを作ったのか、それとも広告制作側がうまく諺を結び付けて映像化したのか。製品開発はもっと前から始まっていただろうから、広告制作側の企画力といいうことなのだろう。ともかく、表面的なおふざけではない、大局的なユーモアが秀逸。

チポトレ

アメリカのメキシコ料理のファストフードチェーン、チポトレのCM。ブリトーを食べてるたぶん姉と弟。弟は「これで世界が変わるとしたら」と語りかける。「ブリトーで? バカじゃないの?」と姉は受け流す。しかし弟は、植物の植え方、水やり、栽培、収穫、輸送を変えれば、農家がハッピーになって、もっとオーガニックになって、二酸化炭素の排出量も減って世界が変わると主張する。環境問題に関心のないお姉ちゃんは、「まだしゃべってたの?」と冷たい。

メニューの宣伝ではなく、企業としての環境問題への取り組みを紹介するCMということだね。ESG意識の高いチポトレでは、チポトレ栽培基金を創設し、次世代農家を持続可能な成功へ導くアクセラレータープログラムを提供するなど、環境問題に積極的に関わっている。

ドリトス

コレまで三角形のペタンコな形をしてたドリトスが、ぷっくら膨らんで「3D」になったというので、新しい「ドリトス3D」のCM。

人気俳優のマシュー・マコヒーが紙のようにペラペラな姿になり、「このごろなんだか自分が自分じゃないみたい。人生はもっと満たされていた……もっと膨らんでいた」とぼやく。ペラペラだからあれこれ困る。テレビに出演したときも司会者に「FAXで来たの?」なんて突っ込まれる。しかし、ドリトス3Dの自動販売機を見つけて、彼はペラペラな体を利用して中に浸入し、ドリトス3Dをほおばる。すると……。

監督は「ラ・ラ・ランド」の脚本監督を務めアカデミー賞を史上最年少で受賞したデイミアン・チャゼル。キャストだけでなく、監督にもビッグネームが登場するあたりも、スーパーボウルCMの楽しみのひとつだね。

金井哲夫

雑誌編集者を経て、フリーランスで翻訳、執筆を行う。