これはFacebookが新型コロナウイルス対策として提供している助け合いのプラットフォーム「サポートの提供またはリクエスト」の広報なのだけど、詩の朗読に載せて映し出される新型コロナウイルス禍で頑張る人々の姿が感動的。
企画は広告代理店droga5-New York。使われている映像は、Facebookの実際の投稿や報道写真家から提供されたものだ。
droga5と言えば、以前Newreelでも紹介したニューヨーク・タイムズのジャーナリズム精神を訴えるCMを作ったところ。けっこう硬派な代理店だ。これは真実とは何かを問いかける「The Truth is」キャンペーンの一環だったのだけど、2017年のアカデミー賞授賞式のテレビ中継の際に放映されたその第一発目のCMが、文字だけの動画で最高にかっよかった(このDroga5のニューヨーク・タイムズのキャンペーン用ページで見られます)。
バックに流れているのは、イギリスの詩人ケイト・テンペストが去年リリースした詩の朗読アルバム「The Book of Traps and Lessons」の中の最後のタイトル「People’s Face」から、一部を抜き出してたもの。内容はこんな感じ。
よろめきながら通り過ぎたあれが歴史的な転換期だったの?
轟音の闇の中で私たちは踊ってる
だからもっと近くに来て
私たちは与えられた恐怖の毎日を生き抜いている
人々が見る自分はまるで自分でないように感じながら
困難の底に押し込められそうに感じながら
今この瞬間も
苦悩に飲み込まれそうになる
そして私たちは友だちみんなに微笑む
力を失い心が折れたときも
私は泣きながら地下鉄の駅に立つ
みんなの顔が見えるから
人の顔にはたくさんの安らぎがある
私は人々の顔が好きだ
テンペストの詩は、表面的には厭世的で破滅的な印象を受けるが、じつは大いに愛を語っている。Red Bullが昨年末に行ったケイト・テンペストのインタビューでは、彼女は「苦痛に満ちたアルバムを聞いても、それが作られるまでにどれだけの人と関わり愛に支えられてきたかを思うと、申し分なくポジティブな体験だと感じる」と話している。苦悩の中に人の愛を感じ取る彼女の言葉は、まさにこの時代に相応しい。
動画の最後にFacebookからのメッセージが現れる。
「お互いにつながれば、私たちは絶対に負けない」
おまけとして、ケイト・テンペストの4カ月前の動画作品「Unholy Elixir」(不浄の秘薬)も紹介しておこう。ラップのようでラップとは違う。詩の朗読と映像の組み合わせというのが、とっても新鮮。