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Reel

Apple AirPodsのCMはサーカス・アーティスト、
ヨアン・ブルジョワの実写だったって、知ってた?

金井哲夫 金井哲夫 Oct 23 2019

テレビで放映されたAppleのAirPodsのCM「Bounce」は、いつも通りのオシャレな映像だなと思った人も多いだろう。しかし、実はよく観るとこれはかなり凝ったCMだ。つくったのはNEWREELで何度も紹介している技巧派監督オスカー・ハドソン。

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Oscar Hudson
cho/cast
Yoann Bourgeois
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Tessellated
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6月にテレビで放映されたAppleのAirPodsのCM「Bounce」だけど、いつものAppleの、ちょっと凝ったオシャレなCMだなと流して見ていた人も多かったではないかしら。しかしそれは違う。かなり凝ったオシャレなCMだったのだ。

監督はオスカー・ハドソン。こう聞けばピンとくるだろう。NEWREELでも何度も紹介している、技巧派の監督だ。実写を基本として、不思議な映像を作り出すことで知られている。たとえば昨年10月に紹介したロイル・カーナーの「Ottolenghi」のMVだ。

そして、その記事の中でも紹介したボノボの「No Reason」も、デジタル合成を柱とせず、実写で作り上げている。

さて、この「Bounce」も、じつはほとんど実写映像なのだ。登場している男性は、コンテンポラリーサーカスの世界では知る人ぞ知るフランス人パフォーマーのヨアン・ブルジョワ。18歳のときにジプシーのサーカスを見て感銘を受け、フランスのENACR(国立サーカス芸術学校)に入学。卒業後は国立サーカス芸術センターで学び、サーカスとコンテンポラリー・ダンスのプロパフォーマーになった。

ブルジョワが得意とするのは、トランポリンに倒れ込んでまた元に戻ったり、高く跳び上がって空中で見せる演技だ。まさに、「Bounce」でやっているあれ。現在は、「Scala」というショーを演出しフランス国内と周辺地域でツアーを行なっていたが、今年の4月には来日し、静岡で開かれた「ふじのくに⇄せかい演劇祭」でも公演を行った。

さて、オスカー・ハドソン監督は、彼の演技を最大限に活かすために、ウクライナのキエフにある大きな飛行機格納庫にセットを作った。あの街はすべてセットだ。しかも、トランポリンを地面に埋め込むために、床から1.8m高いところが道路になるように作られている。

Ageの記事Adによると、ベンチの女性の脇に座るシーンは、全体が90度傾けられているという。つまり、女性の背後の建物の壁が本当は地面になっている。女性はベンチにベルトで固定されているそうだ。

使われている曲はテッセレイテッドが2016年にリリースした「I Learnt Some Jazz Today」。オリジナルは短かったので、Appleがテッセレイテッドと一緒に長いバージョンを制作した。現在販売されている「I Learnt Some Jazz Today」は、そのエクステンデッド・バージョンだ。

撮影全体にかかった時間は12日間。200人ものアーティストや技術者が関わったという。 これだけのクオリティーの作品を作ろうとすれば、メチャクチャ大変なのだろうが、本物のアーティストのパフォーマンスは、その人ににしかできないアート表現なわけで、やっぱりこればかりは実写でないと意味がない。

金井哲夫

雑誌編集者を経て、フリーランスで翻訳、執筆を行う。