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トーブ・ロー「Glad He’s Gone」のMVを監督した
ハイマンとマッジアのコンビは要注目

金井哲夫 Sep 26 2019

トーブ・ローがフラれた女友達を電話でなだめながらトンデモナイ場所を歩きまくる! このMVを手がけたのは、2016年にコールドプレイの「Up&Up」で注目をあびた若手監督コンビ、バニア・ハイマンとガル・マッジアだ。

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Vania Heymann, Gal Muggia
prod co
ICONOCLAST
m
Tove Lo
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6月に公開されたスウェーデンのシンガーソングライター、トーブ・ローのシングル「Glad He’s Gone」のMVは、ちょいと見逃せない。レストランでボーイフレンドと食事をしようとしていたとき、女友だちから電話が入り、彼氏にフラれたと泣きついてきた。トーヴ・ローは彼女に、あんなクソな男と別れて私は嬉しいとなだめる。話をするためにトーヴ・ローは店を出て歩き出す。彼は最低の男だと、友だちを慰める言葉を並べながら、トーヴ・ローはいろんな場所を歩き回る。外国で犯罪に巻き込まれ牢獄に入れられ、脱獄して偽造パスポートでやっと帰国してレストランに戻ってくる。

見てのとおり、この映像がとんでもない。どんだけロケしてるのかという感じ。監督は、フランスのプロダクション、イコノクラスト所属でイスラエル出身のバニア・ハイマンとガル・マッジアの2人。じつは、この2人がものすごい才能の持ち主だった。

ガル・マッジア監督は、わずか20歳でイスラエルの有名バンド アサフ・アビダンのMVを制作して注目を集めた。世界的に認められるようになったのは2016年、コールドプレイの「Up&Up」のMVを、バニア・ハイマンと共同で監督してからだ。マッジアはこの作品でMTVの視覚効果賞を受賞した。その他の作品を見てもわかるけど、その技術とセンスは抜群だ。

ガル&バニアによるコールドプレイの「Up&Up」は再生回数1億8000万回を記録した

バニア・ハイマン監督は、イスラエルにあるベツァルエル美術デザイン学院ビジュアルコミュニケーション科で映像を学んだ。2010年、入学して最初の「宿題」として制作したのが、小さいころからじょうろが大好きな若者が、イケアのじょうろをプレゼントされて取り憑かれてしまうというショートフィルム「my watering can」(ボクのじょうろ)なのだけど、これがとってもよくできている。さらに、この続編として翌年に作られた「crazy watering can」(狂ったじょうろ)では、宗教的シンボルをイケアのじょうろに置き換えることで、宗教とは何かを問いかけている。

さらに驚きなのは、2013年、在学中に制作したボブ・ディランの名曲「Like A Rolling Stone」のMVだ。いろいろな実写映像をかき集めてコラージュしたのかと思ったら、よーく見ると、登場人物はみな歌詞を口ずさんでいる。テレビ番組の司会者も、通販番組の女性も、テニスの試合中の選手も、防犯カメラにたまたま写った人も、昔のモノクロ映像に映ってる人も、みんなボブ・ディランの歌に口が合ってる。有名なテレビ番組のホストまで登場する。1カ月かけて、いろいろな人に出演交渉をしたとのこと。相当な執念だと感心する。

しかもこのMVは、インタラクティブMVとして話題にもなった。画面左側のChannelボタンをクリックすると、いろんな人が歌ってる映像と、ボブ・ディランが演奏している映像を切り替えて見ることができるのだ。

「Glad He’s Gone」は、このハイマン監督のアイデアとマッジア監督の視覚効果技術が合体した作品というわけだ。このコンビ、絶対に注目すべし。

雑誌編集者を経て、フリーランスで翻訳、執筆を行う。

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