アルバム「Cuz I Love You」に収録されている「Tempo」のMV。この曲ではミッシー・エリオットがゲストで参加しているが、MVでもミッシーが車のボンネットからぴょーんと飛び出してくる。
リゾと言えば実力派のシンガーであり、同時に「ボディポジティブ」のアイコンだ。ボディポジティブとは、モデルのようなホッソリ体型じゃなくてもいいじゃん、という考え方だ。リゾも、そのふくよかな体型を、ありのままの自分として誇りを持って前面に押し出している。「Cuz I Love You」のジャケットアートも自身のヌード写真だ。
Tempoの歌詞でも、「スローソングなんて、やせっぽちが聴くもの。私は太めだからテンポが欲しいのよ。私のケツは飾りじゃないの。私のトゥワークは伝説級」と超ボディポジティブだ。ちなみにトゥワークとは、MVの中でもお姉さんたちがお尻をぶりぶりやってるアレのこと。
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監督は、カナダ出身でロサンゼルスを中心に活躍し、おもにヒップポップ系のMVを多く制作しているアンディー・ハインズ。ザ・カナディアン・ポストのエリザベス・エイハーンのインタビューによると、彼はこの撮影中に、ドリーのレールにつまづいて足首を骨折したそうだ。しかし、この2人のスターが共演するMVは、絶対に他人には譲りたくなかった。そのため病院には行かず、スタッフが松葉杖を持ってくるまでセットを這いずり回っていたという。
とくにミッシー・エリオットは、この20年間、同じ監督、同じカメラマンで仕事をしているため、これは大変な幸運だった。「MVの監督としては、ほとんど叶わない人生の目標」とまで彼は言っている。
ハインズ監督はカナダ南東部のノバスコシア州という、スコットランド系の人々が多く住む地区の出身であるため、ロサンゼルスで仕事をしていると地元の人たちとの感覚の違いをよく感じる。だが、それがいい刺激になっている。「初めて撮影を行う街中のダイナーの駐車場に立って思った。ボクはノバスコシアの人間。こいつはクレイジーだとね」とハインズ。
「本物のリアリティー」を常に追求してる彼は、リゾと同じ社会的メッセージを擁護する側に立ちたかった。「30代のカナダ出身の白人である私は、今の政治的な空気や国際情勢を見るにつけ、とくに北米に住む人間として、人間の権利やインクルージョンのために立ち上がるべきだと思うのです。……それは、たくさんの違うシナリオ、違う人たちの人生に興味を持ち共感するということです」とのことだ。
ちなみに、ぴょんぴょんするローライダーの上でふわふわ飛んでいるお姉さんたちは、ミッシー・エリオットのMVによく使われている「マジックリアリズム」に敬意を表したものだそうだ。