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米津玄師が歌う「海獣の子供」の主題歌は
五十嵐大介への熱い思いから生まれた

金井哲夫 金井哲夫 Sep 11 2019

アニメーション映画「海獣の子供」の主題歌「海の幽霊」がヒットチャートを賑わせている。本作原作者の五十嵐大介とシンガーソングライターの米津玄師は、以前からお互いをリスペクトする間柄だったと語る。

dir
Daisuke Igarashi
prod co
STUDIO4°C
m
Genshi Yonezu
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アニメーション映画「海獣の子供」の主題歌、米津弦師の「海の幽霊」のMVが5月27日に公開されるや、5月27日から6日2日までのわずか7日間でビルボードジャパンの「JAPAN Hot Animation」チャートで1位となり、オリコンが発表したYouTubeチャートの「週間楽曲ランキング」でも初登場で1位(しかも2位のあいみょんを2倍以上の再生回数で引き離している)とすごいことになった。しかもYouTubeでは、4日半で再生回数1000万回を突破するという大変な勢いだった。

普段から音楽配信チャートのトップに複数の楽曲がある米津玄師だが、「海獣の子供」の主題歌を担当したのは、ただ人気だからというわけではない。「海獣の子供」の原作者五十嵐大介と米津玄師とは、じつはそれ以前から相思相愛だったのだ。そのあたりの経緯は「海獣の子供」特設サイトに掲載された米津玄師と五十嵐大介との対談でたっぷり語られている。

MVは映画「海獣の子供」の映像が全面的に使われているが、本編からどのようにシーンを選択したかについては、映画のアニメーションを制作したSTUDIO4°Cの田中栄子プロデューサーは「歌詞のイメージを元に、キャラクターたちが思い起こされるように次々と登場してくる感じ」と話す。また、本編のCGI監督で、このMVの監督も務めた秋本賢一郎と米津弦師のプロデューサーとが、非常に細かくディスカッションを重ねた。両者は大まかに編集したものをメールで何十回もやり取りしながら、修正を繰り返していった。

「最終的に、米津さん本人にSTUDIO4℃に来ていただき、細かいタイミングや使うカットを決め込んでいきました。米津さんとはその時初めてお会いしたのですが、とても真摯な方で、問題の箇所ひとつひとつと丁寧に向き合って、相談しながら作業を進めることが出来、個人的にはそのやり取りがとても刺激的で面白かったです」と秋本監督は振り返る。「ただ、お世辞にも音の再生環境が良いとは言えない自分のPCにイヤホンを挿して、散らかった中で一晩中編集を行うことになって、大変申し訳なかったです」。

MVからも本編「海獣の子供」の空気感(海中感?)がたっぷり伝わってくるのだが、それはキャラクターデザイナーであり作画監督を務めた小西賢一氏が「五十嵐先生の描画力を損なわないように目指した」結果だと田中プロデューサーは称賛する。原作から受けるイメージをそのままに動かす力量は、並大抵の才能ではない。

映画のテーマのひとつは、そのひとつは「私たちはこの世界で本当に起きていることを知らないし、世界は不可思議なことで満ちていて、私たち自体が生命体の一部であり、誰もが体の一番奥でつながっていて、本当に大切なことは言葉にできないし、一番大切な約束は言葉では交わせない」世界観。それを実際にどんなテクノロジーで表現したのか田中氏に聞くと、基本的に「紙と鉛筆と消しゴム」と答えてくれた。その他、ポスターカラー、Photoshop、Maya、After Effectなど、使われたツールは驚くほど身近なものばかりだ。独自開発のツールはないかと尋ねると、「独自に開発したのは飽くなき探究心と、決して諦めない感性と表現力の追求でしょうか」と田中氏は教えてくれた。

最後に、MVの制作にあたって、とくに意識したことを秋本監督に聞いた。
「海の幽霊は、海獣の子供の内容や伝えたいことに丁寧に寄り添って作っていただいた楽曲だったので、最初に音楽を聴いたときに何箇所かは自然と、ここにはこのカットが合いそうだな、と思いつくことが出来ました。ですので、なるべくその感覚を大事にしながら、MVを観た人も自然に曲と歌詞と画を受け入れられるように意識して作っていきました」。

金井哲夫

雑誌編集者を経て、フリーランスで翻訳、執筆を行う。