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Flying Lotusと渡辺信一郎のコラボ「More」がかなり怖い

金井哲夫 May 31 2019

「カウボーイ・ビバップ」「サムライ・チャンプルー」などで知られるアニメ監督 渡辺信一郎が、Flying Lotusの「More」のMVを制作した。スタッフ陣には小原秀一をはじめ、平岡政展、久保雄太郎といった面々が参加。

dir
Shinichiro Watanabe
prod co
sankaku
m
Flying Lotus (feat. Anderson.Paak)
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フライング・ロータスのニューアルバム「Flamagra」に収録されているアンダーソン・パークをフィーチャーした「More」のMV。監督は、1980年代から絵コンテ、脚本、演出、監督などで日本のアニメ文化を支えてきた渡辺信一郎。フライング・ロータスとのコラボは2017年の短編アニメ「ブレードランナー・ブラックアウト2022」以来。この曲にインスパイアされた渡辺監督は「日本アニメ界の最高の人材を揃えた」と話している。キャラクターデザインとコンセプトデザインは小原秀一、その他アニメーション制作では平岡政展久保雄太郎といったアーティストが数多く参加している。

「More」は、タイトルが示すとおり、もっと大きな人間になってお前を見下してやる的な歌。「もっともっと」と繰り返される。「There’s gotta be more life than myself」(自分自身より、もっと大切なものがある)というリフレインでは、欲望が自分を超えてしまった異常な心理状態がうかがえる。

アニメでは、不時着した宇宙船から出て来た男性(Flying Lotusだねこれは)が、ロボットの花屋らしき出店に辿り着く。テーブルには花などの商品がなく、「お前のエゴが種だ」とだけ書かれている。ロボットの胸でアンダーソン・パークのレコードが鳴り出すと、男性の体に変化が起きる。たぶん内部からエゴが成長してきて、最後にはその人の肉体を破壊して「花」になる、ってなところかな。つまり、自分自身よりも大切なエゴが花咲いたというわけだ。

このアニメの力の入れようったら凄いものが感じられるが、そのインスピレーションの源であるフライング・ロータスのサウンドがまた分厚い。70年代の日本のシンセポップやモダンジャズの影響も受けているというフライング・ロータスの大叔父は、なんと伝説のジャズサックス奏者ジョン・コルトレーンとのことだ。

フジテレビ系列で放映されている渡辺信一郎監督のアニメ「キャロル&チューズデイ」(全国放送はBSフジ水曜午前0時から)の第6話では、フライング・ロータスが楽曲を提供している。

雑誌編集者を経て、フリーランスで翻訳、執筆を行う。

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