近畿地方で電気の保安業務を行っている一般財団法人の関西電気保安協会と言えば、関西ではその独特なCMで知らない人はいない。かつては堀井博次氏、川崎徹氏のCM界のレジェンドによる関西らしい素朴にしてコテコテのCMが放送されていた。YouTubeで「関東電気保安協会」と検索すればわんさか出てくる。浪速のモーツアルトことキダ・タロー氏作曲とも言われているそのサウンドロゴは関西の人たちの耳に染みついているようで、関西人は「関東電気保安協会」を節を付けずに平板に発音することができないとまで言われている。それが、2008年2月29日に朝日放送で放映された「探偵ナイトスクープ」の小ネタコーナーで実証(?)されたというのも有名な話。
この協会のCMは、職員を使った素人臭い、いい意味で間の抜けた笑いが定番で、最近でも、映像は洗練されてきたものの、素人くさい味は残されていた。ところが、今年の3月、YouTubeに突然現れたこのCMの変わりっぷりには、みんながぶっ飛んだ。企画は大阪のクリエーティブエイジェンシー、タイガー タイガー クリエイティブのCMプランナー細田佳宏氏。
電気グルーヴの石野卓球氏が音楽を担当していることでも話題になった。これが公開された直後にピエール瀧氏がコカインで逮捕され、YouTube から消えてしまうのかと心配したが、協会は存続を決めた。公式ホームページにもしっかりと載っている。ピエール瀧氏は「まったく関与していない」からという同協会のコメントはちょいと消極的だけど、安易な自粛の流れに乗らなかったことは嬉しい。
映像の中には、「All ways update」というフレーズが何度も現れる。同協会がずっと訴えてきている「古い保安機器の更新」というメッセージだが、このCM自体も協会イメージの「更新」を意味している。でも、ちゃんとあのサウンドロゴは組み込まれているし、腹話術人形のホアンくんも登場し、かっこよさそうに見えて、やっぱりお笑い路線は崩されていない。一皮剥けたようで、内面はぜんぜん剥けてないところがまた嬉し。