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ロサンゼルスの「恋人」クコが歌う
切なく陽気な「AMOR DE SIEMPRE」のMV

金井哲夫 金井哲夫 May 14 2019

メキシコ系アメリカ人シンガーソングライター、クコ(Cuco)。昨年9月に公開された「Amor De Siempre」のMVは、VimeoのStaff Pick に選ばれたほか、SXSW 2019では「オフィシャル・セレクション」にも入った注目度の高い作品だ。

dir
Kinopravda / Viktor Horváth
prod co
Caviar London
ex pr
Daniella Manca
m
Cuco
Red Bull Music
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クコ(Cuco)が2016年に発表した「Amor De Siempre」のMV。昨年9月に公開され、VimeoのStaff Pick に選ばれた作品だ。SXSW 2019 でも「オフィシャル・セレクション」に選ばれている。

クコは、ロサンゼルス南東部の街ホーソーン出身のメキシコ系アメリカ人シンガーソングライター。まだ大学生だった2016年に自主制作アルバム「Wannabewithyou」をインターネットでリリースすると、じわじわと人気が広まった。「Amor De Siempre」はその中に収録されていた曲。

クコの作品は、甘く優しいラブソングが中心で、現在20歳という若さもあってか、おもに若いメキシコ系アメリカ人の間では「Heartthrob」(恋人)とも呼ばれ、アイドル的存在になっている。ローリングストーン誌のインタビューでは、「ボクはめちゃくちゃセンチメンタルなんだよ」と話していた。そのセンチメンタルなサウンドから「ベッドルーム・ポップ」や「チルウェイブ」と呼ばれるたりもする(本人は嫌っているが)。

「マリアッチ・バージョン」となっているのは、クコの地元で活躍する女性だけのマリアッチ(メキシコ音楽を演奏する伝統的な楽団の総称)マリアッチ・リンダス・メキシカナスと共演しているため。ちなみにクコは、高校生のころに地元のマリアッチに加わり、いろいろな楽器を経験してマルチインストゥルメンタリストとなった。両親を大切に思い、実家をリフォームしながら一緒に暮らしているクコは、地元社会も大いに大切にしている。これはその現れだ。

撮影に参加したマリアッチ・リンダス・メキシカナスの女性たち

このMVは、レッド・ブル・ミュージックのために、Caviarが制作した。監督は、6人の映画監督とアーティストで構成されるスペインとハンガリーの映像作家集団のキノプラウダ(KINOPRAVDA)所属のビクトル・ホルバス。マクドナルドや MTV など大手のクライアントを持ち、CM や MV を数多く制作している。MV の冒頭、曲のイントロ部分には、若いスペイン系アメリカ人たちの、恋愛に関する他愛のない話が挿入されていて、南カリフォルニアに暮らすメキシコ系アメリカ人の若者の恋愛事情を表したドキュメンタリーのようでもある。最初の男の子は、幼い弟が彼女の服にウンチをして、それで別れちゃった、なんて話している。

曲のタイトルである「Amor De Siempre」は、スペイン語で「日常の愛」という意味。内容も、甘くて優しくて切ない恋の歌だ。オリジナルの曲はもっとゆったりしているのだが、このマリアッチ・バージョンは、明るく陽気なラテンっぽいアレンジになっている。

真ん中の男性がビクトル・ホルバス監督

この作品について、NEWREELはホルバス監督から話を聞いた。監督によればこのMVは、「正統派の、そして感情豊かなドキュメンタリー作家のレンズを通して、そこに自身が愛のマエストロであるクコによる陰影を加え、ロサンゼルスの若者たちの、恋愛を原動力に暮らす日々を祝福するもの」だという。

「典型的で派手な主流派のMVを作る気はありませんでした。それより、クコのファンたちの手が届く、本物のクールなものにしたかった。私たちは、クコのファンを含む実在の若者たちを登場させてインタビューを行い、プラトニックな愛、情熱的な愛、友情、片思い、家族の愛など、さまざまな形の愛の瞬間をドキュメンタリーとして探っていきました。彼らに敬意を払い、受容するトーンでね」

「いわゆるロサンゼルスの若者」というステレオタイプにならないよう、性的指向、ジェンダー、ルックス、人種、趣味などといったメディアで型にはめられた側面ではなく、それらを横断する多面的な彼らの個性を見せたかったとのこと。

目指したのは「友だちや恋人たちの自然なポートレートと、クコとマリアッチ・リンダス・メキシカナスが現れて日常の愛のセレナーデを奏でるサプライズに喜ぶファンや観客たちとの、特別で予想外なリアクションとのバランスをとって記録することだった」とホルバス監督は話していた。

「Amor De Siempre」撮影中の一コマ

クコは、「できたら今年の夏に」ニューアルバムを完成させたいと話しているが、その前にいくつかの新曲がシングルでリリースされるという。

金井哲夫

雑誌編集者を経て、フリーランスで翻訳、執筆を行う。