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金ならあるんだ、心配するな、どんどん使え、と囃し立てる
アダーソン・パークの新曲「Bubblin」のバブリーなMV

金井哲夫 May 28 2018

スパイク・ジョーンズ監督によるApple HomepodのCM音楽として起用され話題となったアンダーソン・パーク。彼のニューシングル「Bubblin」は街角のキャッシュマシンからお金がどんどん出て来て金持ちになってしまうという、誰もが憧れる夢のような話だ。

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Calmatic
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Anderson .Paak
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スパイク・ジョーンズの監督作品として大きな話題になった Apple HomePod の CM では、「’Till it’s Over」でメローなラブソングを披露したアンダーソン・パークだが、ニューシングル「Bubblin」(バブリン)は、がらりと変わって「金ならあるんだ、安心しろ、派手に遊ぼうぜ」というお祭りのような歌になっている。

MV も、そんなお祭り騒ぎを映像化したお馬鹿な雰囲気。街角のキャッシュマシンからお金がどんどん出て来て金持ちになってしまうという、夢のような話だ。

タイトルの「Bubblin」とは、ちょっと見「バブリー」のように見える。MV もバブリーな感じだし、最後にキャッシュマシンに潰されてしまうのもバブリーだけど、バブリンとはスラングで「気楽にやる」といった意味。「手に持ってるし、バッグの中にもある。安心しろ。この金を見ろ。安心しろ」と歌の中で繰り返す。

普通の青年がそのキャッシュマシンを手に入れて、どんどん成金になっていく姿が面白い。ゴージャスに着飾ってシマウマの遊具に乗った子どもの脇で、本物のシマウマを連れているパーク・アンダーソンの姿もじつに笑える。

監督は、おもにヒップポップの MV を制作しているカルマティック(Calmatic)。もともとはイラストレーターで、アルバムジャケットを制作していたのだが、ケンドリック・ラマーやアンダーソン・パークと知り合うようになって、MV を撮影するようになった。Music Video Night のトークショーでカルマティック監督は、人を笑わせるのが好きだと語っている。

2016年の HipHopDX の記事には、コメディアンで俳優のクリス・ロックが2016年のアカデミー賞授賞式の司会として、アフリカ系アメリカ人(黒人)が集まるロサンゼルスの映画館の前で街頭インタビューをしていたとき、たまたま居あわせたカルマティックとの会話が紹介されている。ロックはハリウッドの人種差別的な体質を批判し続けていて、アカデミー賞授賞式でもその話題を人々に振っていた。そうした中で、好きな映画は何かと尋ねられたカルマティック監督は、「フォレスト・ガンプ」と答えていた。

カルマティック監督は、「自分のプロジェクトでは、スタッフ全員黒人で、ちょっとアジア人も入れて、みんなが多様性を感じられるように、という意識はとくに持っていない」と話している。「できるだけナチュラルに」というのが彼のモットーだ。「白人がそこにいれば、それもいい」というのが彼の言うナチュラルという意味だ。

ずっとヒップポップの、しかも黒人アーティストの MV を制作し続けているカルマティック監督だが、彼のサイトの自己紹介ページには、影響を受けた人や物の名前が無数に載っている。当然、「肌の黒い女性」や「黒人」や黒人アーティスト、黒人アスリートも多い中で、筆頭にスパイク・ジョーンズを掲げ、スティーブン・タイラーの名前も見られ、アーティストとしての興味の幅の広さを感じさせる。

2016年にはウィリアム・モリス・エンデヴァー・エンターテイメントと映画監督として契約したというカルマティック監督は、ショートフィルムや映画にも挑戦したいと話している。


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雑誌編集者を経て、フリーランスで翻訳、執筆を行う。

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