NEWREEL
Reel

ありふれた雑貨店の宇宙に広がるデヴィッド・ボウイ的幻想の世界

金井哲夫 金井哲夫 Jan 25 2018

昨年、世界各地で「デヴィッド・ボウイ大回顧展」が開かれ、スペインのバルセロナでは「サウンド・アンド・ヴィジョン」を題材にしたショートフィルムが上映されていた。NEWREELでは、本作を手がけたCANADAから話を聞くことができた。

dir
CANADA
FacebookTwitterLinePocket

昨年、「デヴィッド・ボウイ大回顧展」(David Bowie is) が世界各地で開かれたが、スペインのバルセロナでは、泣きたくなるほど美しいショートフィルムが上映されていた。ボウイの1977年のヒット曲「サウンド・アンド・ヴィジョン」を題材にした作品だ。

制作したのは Beck の「Up All Night」で UK Music Video Awards 2017の最優秀作品賞を受賞したスペインのディレクターズデュオ「CANADA」。

NEWREEL では、CANADA から話を聞くことができたので紹介したい。

でもその前に、デジタル・ビデオ・チャンネルNOWNESSに掲載されたCANADAによる解説を一部お伝えしておこう。

ちなみに、NOWNESSでは、動画の下に現れるSubtitlesメニューから日本語を選べば、日本語字幕が表示されるようになる。

大回顧展の主催者がCANADAに求めたのは、「デヴィッド・ボウイとバルセロナの繋がりを表すこと」だけだった。デヴィッド・ボウイはあまりにもビッグネームなので、CANADAは、正面から扱うのではなく、「からめ手」で見せることを最初に思いついた。

「彼を前面に出すのではなく、彼の神秘的なスターダストを繋がりのない世界にちりばめることにした」とCANADAは話している。

舞台はバルセロナの、中国人が経営するごく庶民的な雑貨店。ここで交わされる、経営者の甥で店を手伝っている少年テーと、その友人で青く髪を染めた少女ミーとの会話は、スペイン語と中国語が入り交じった不思議な感じ。2人は、互いに声は聞こえるが、姿を見ることがあまりない。体を触れることもない。

少年がデヴィッド・ボウイの名曲「サウンド・アンド・ヴィジョン」の歌詞に登場する言葉を呟くと、そこから夢の世界が展開する。ミーを象徴する青い毛糸が宙を漂い、テーを象徴する風船ガムのハートを射貫く……。

さて、ここからがNEWREELのインタビューだ。

──曲に「サウンド・アンド・ヴィジョン」を選んだのはなぜですか?

ボウイの曲はたくさんありすぎて……、私たちがなぜこれを選んだのかは、ハッキリとはわかりません。でもとてもいい曲です。長いイントロは、映像で遊ぶキャンバスとして最高です。歌詞はときに説明的過ぎることもありますが、同時に、美しく詩的で、単なる言葉を超えたものもあります。音とは何か、視覚とは何かを疑問に思う言葉が青という色に言及する……みたいな。この歌には、理論を超えた磁力のようなものがあるのだと思います。それに、(この動画で使っている) キュートで、水の中にいるような、メローなバージョンもあります。そちらの曲は、霊的なものや、無生物的力が生命を得る状況を連想させます。新しい命の目覚めのような……。

──あなたがいちばん好きなボウイの思い出を教えてください。それは、ティーンエイジャーや中国人少年や人の繋がりに関係するものですか?

「ジギー・スターダスト」を初めて聞いたときのことを覚えてます。とくに「スターマン」に感動しました。それに「5年間」。でも、中国人や人の繋がりとは関係がありません。それは別のところから来たアイデアです。ボウイ繋がりではありません。

──ボウイに関連するものとして、スターダストやスパイダーや青といった要素が出てきますが、どれくらい、ちりばめられていますか?

本来「Mars」(お菓子のブランド) と書かれているべきところに「Spider」と書いてあるのは、「Spider from the Mars」(訳注 アルバム「ジギー・スターダスト」の原題:The Rise and Fall of Ziggy Stardust and the Spiders from Marsから) の洒落です。少女がマニキュアで描く稲妻。蜘蛛のようなチップで、万引きしたCDの上を引っ掻いて、自分の手首に刺す。血管から流れ出す青い血は、彼女がどこか普通の人間とは違う様子を示しています。彼女が雑貨店の中を人間離れした速度で移動するのも、それを表しています。これらすべてが「ジギー・スターダスト」のキャラクターに関連しています。

しかし、私はボウイ的な要素で埋め尽くそうとは考えませんでした。もっと概念的な融合なのです。たとえば、最初は非常に人間的だった少女が、最後には大人びた謎めいた人物に変化します。顔にパールを美しく貼り付け、安っぽい造花の王座に座り、神託を受けたような様子を見せる (少年に「聴覚と視覚のことを考えたことある?」と聞かれると、そのパスワードを待っていたかのように、少年の言葉を待たずにほぼ同時に復唱する。それはあたかも時を超えて繋がりを求めていたスフィンクスのよう)。こうしたアプローチが、物や言葉でボウイ的な要素を表すよりも、ずっとボウイらしいのです。

──歌が始まるのは後半からですよね。これには特別な理由があるのですか?

私は音楽の感情的な部分が好きなんです。感情移入しやすいキャラクター、一貫したシーン、わかりやすい世界観を事前に受け取っていれば、その感情のピークに簡単に、より強く達することができます。その導入がうまくいけば、歌がすべてをまとめ上げてくれます。

──技術的なことを聞かせてください。毛糸が宙を漂っていく場面は、すべてCGですか? または、特別な効果を使っているのですか?

毛糸と風船ガムは完全にCGですが、VFXスタジオ Glasswork Barcelonaが作ってくれた素晴らしいモックアップ映像の動きに従って、背景だけを35mmフィルムで撮影しました。

──デヴィッド・ボウイ大回顧展の観客の反応はどうでした?

展示会での観客の反応を正確に測る手立てがないので、そこはよくわかりません。しかし、このショートフィルムは、主催者にも観客にも概ね好評だったと思います。私たちは、とても満足しています。

メイキング動画はこちらで見ることができる。


関連アイテム

金井哲夫

雑誌編集者を経て、フリーランスで翻訳、執筆を行う。