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覆面ユニット青い果実のクールなMV「mebius feat. ico!」は、
気候がクールすぎる山梨産だった

gabin gabin Jan 31 2018

デビューアルバムがリリースされたばかりの覆面ユニット青い果実。アーバンなMV「mebius feat. ico!」を制作したスタジオ石のMr.麿に、意外すぎる制作プロセスを聞いた。

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Mr.麿
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覆面ユニット青い果実のMV「mebius feat. ico!」が話題だ。
1月24日にファーストアルバム『AOKAJI』がリリースされたばかりの青い果実。覆面ユニットといいつつ、現代はちょちょいと検索すれば正体がわかってしまう。それを承知の上での覆面なのだろう。
メンバーを知ると、確かにいつもと違った一面を各メンバーが見せていて、覆面ユニットというカタチで、これまでのキャリアの色メガネなしで聴くべき楽曲であるように思う。それを後押ししているのがこのMVである。

白地にほぼハイコントラストの人物だけの画面構成。左右反転のシンメトリー構成にちょっとしたエフェクトだけ足したド☆シンプルな映像。これは個人的な好みなのだが、1ネタでぐいぐい押してくる映像が大好物なので、この映像も何度も繰り返し見てしまう。
終盤のシンメトリー構成だけが押し寄せる展開は圧巻だ。

制作したのはスタジオ石のMr.麿。念のため説明しておくと、スタジオ石は、山梨県を拠点に活動するラップグループstillichimiyaのメンバーのMMMとMr.麿による映像制作チーム。田我流を始めとするstillichimiya関係の映像(MVだけでなくバラエティ番組風のコンテンツまで)の他、様々なアーティストのMV制作などを行っている。
一例をあげれば、ZEN-LA-ROCKの「ICE ICE BABY feat. JOY McRAW」。今年のJR SKI SKIキャンペーンみたいなことを5年前にやってたり。

映像制作関係者にスタジオ石のファンは多い。映像ギミックのさりげない使い方や、丁寧な仕事っぷりが玄人好みなのかもしれない。今回もスタジオ石らしい仕事っぷりが小気味いいMVに仕上がっているのだが、ひとつ気になるのはスタジオ撮影だということ。
スタジオ石といえば、外ロケビデオばかりの印象。珍しいスタジオ撮影をなぜ選んだのか気になったので、Mr.麿に質問をぶつけてみた。

──こういうスタジオ撮影は珍しいですね。

とにかく制作費が無かったので、まずはお金をかけずにやらなければならない、というのが話を頂いた時に大前提としてありました。ですが曲調が女性ボーカルも入って、割とクールというかおしゃれな感じだったので、「こりゃどうしたものか……」と。
お金がない時は(交通費も無いような場合)僕が住んでる山梨に来てもらって、近所で撮影して何とかするってことが多いのですが、今回はそうは行きませんでした。
というのも……
・いなたいロケ地には事欠かない山梨ですが、如何せん今回の曲調に合うようなクールなロケ地はない。
・そして曲に参加しているメンバー4人が同時に集まれるのが一日、しかも夜しかない。
・更に冬なので、山梨の夜はとても寒い。
という状況だったもので、普段やらないのですがスタジオ撮影のみで行こうと決めました。

──スケジュールと、山梨の環境が撮らせた映像だったんですね! ということはこのアーバンな映像、 実際には山梨で撮影されたんですか?

メンバーの方々が、ひとつの車に乗り合わせて、夜中12時に山梨の僕のところまで来ました。しかもスタジオ撮影といっても、僕の仕事場に白いペーパーを垂らして無理くり撮影する簡易的なものですが….…。

──え!? アレ、ちゃんとしたスタジオ撮影じゃなくて仕事場で撮ったものなんですか??

はい……色調としては、クールな感じにしたい、且つ半覆面グループ、ということだったので、ほぼモノクロ且つコントラストを強めにして、顔がハッキリとは分からないようにしました。

──おお……完全に都会のスタジオの白ホリで撮られたものと思ってみていました。コントラストに関しては、覆面バンドだから顔をちょっと隠しながら、ということだと思うのですが、70’sの映画のオープニングシークエンス、たとえばモーリス・ビンダーとかの雰囲気が出てますね。

「007」とか「シャレード」のオープニングシークエンスは好きです。

──あの液体のモヤモヤしたものはなんですか。

アレは、あまりお金かけずに何か味付けしたいな、と思って、水槽を使って撮影しています。ネットで見つけた、同じ市内の人の水槽を800円で譲ってもらって、スポイトと墨汁を100円均一で買ってきて、水に墨汁を垂らす様を水槽の外から撮影して、素材を作りました。

──合計1000円ですね。

元々は海外CMかなにかで、絵の具が出る様子を水槽内のプログラミングされたカメラが捉えてるヤツみたいにしたくて、挑戦してたんですよ。ハウジングつけたカメラを水に入れて手で動かしてということを2日間ほどやって。

──うまくいかなかったんですか?

ダメでした。直に手でカメラを動かすと、ブレてやっぱり上手くいかないし、ずっと水の中に入れてるために、手がかじかんで。2日目の夜中に「年の瀬に俺は何をしとるんだ……」と何だか悲しくなってきてしまい、その手法は諦めて、水槽の外から撮影するやり方に切り替えました。

──またもや山梨の寒さに邪魔されて……。

水槽内でカメラ自体を動かすことが出来なかったので、せめてパソコン内で立体的な動きを付けよう、ということで、初めて、After Effects内でカメラをシミュレートするのに挑戦しました。やってる人は当然のようにやってることなのでしょうが……。

──あ。あそこは2D的に拡大してるんじゃないんですね。

今回は素材自体をズームさせるのではなく、PC内の仮想の空間内に撮影した素材を置いて、シミュレートしたカメラを動かす、といった感じのやり方……になるんでしょうか。イマイチ詳しくないんでちゃんと説明できてるのか自信ないです、すみません……!

エディット中の画面

──演者の映像を3D空間にたくさん配置して、その中をぐいぐいカメラがすすんでいってるわけですね。あの後半の畳み掛けるようにどんどんズームしてくるシーンは、事前にどれくらい構想されている感じなんですか? というかMr.麿さんは絵コンテをしっかり描くタイプなんでしょうか?

ある程度ストーリーのあるものに関しては、演者さんに何するか分かってもらわないとならないので、下手ながら絵コンテも描きます。
今回のようにストーリーがなくて要素の積み重ねのようなビデオの場合、参考画像を何個かあげるくらいでしょうか。今回は、ヒッチコック劇場のOPとか「ティファニーで朝食を」のヘプバーンの画像を衣装とか絵面のイメージとして見せました。

──構成に関してはどうですか?

構成とかは今回事前には全く考えてなかったですね……。

──ではポストプロダクション時に結構内容が決まっていく感じなんですね。

そうですね。一度目のサビを作っている最中に、後半はカメラのスピードと素材の多さを増して、カオスのになる手前ぐらいに見えるようにしたいなぁと考えました。cyriak(イギリスの映像作家。カオスな世界観が特徴)の動画のような超絶的なグチャグチャは、大変過ぎるし曲調にも合わないと思いまして。

──そのバランスに向かって編集していくってことなんですね。いやしかし、いつもとだいぶ雰囲気の違う作品だと思いましたが、お話をうかがうとアプローチは実にMr.麿さんらしいものでした。一宮からの作品期待しております!

Mr.麿

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NEWREELの編集者。だいたい家にいる。インデペンデントな作りの映像と、映像の周辺に起こっていることに特に惹きつけられてます。