ネット中立性の撤廃ってナニ?
バーガーキングがすごーくわかりやすく説明します。
昨年12月、アメリカで「インターネット中立性に関する規制の撤廃」が可決された。これが国民にとって一体どんな影響があるのか? 大手ハンバーガーチェーンのバーガーキングは自社の商品を使った解説動画を発表した。
- dir
- Kris Belman
- prod co
- Here Be Dragons
昨年の12月、アメリカの連邦通信委員会は、インターネット中立性に関する規制の撤廃を決めた。
インターネット中立性については、2000年ごろからずっと論議されていて、世界ではいまだにハッキリとした方針が定まらない状態が続いている。国によっても対応が違う。それだけ複雑で深い問題なのだ。
アメリカにはオバマ政権の時代に作られたネット中立性を守るための規制があったのだけど、それが撤廃されたということで、あちらこちらで反対運動も起きている。
だけど、インターネット中立性ってナニ? と聞かれても、うまく説明できない。というか、なんだかよくわからない。それが撤廃されると何がどうなるのか。アメリカでは反対運動なんかも起きているらしいが、実のところ、わかっていない人が多い。
そこを問題視したハンバーガーチェーンのバーガーキングが、こんな動画を制作したというわけだ。
バーガーキングのツイートにはこう書かれている。
How would you explain the repeal of Net Neutrality? We did it with the Whopper. Watch the video below: pic.twitter.com/9EWjtbenv8
— Burger King (@BurgerKing) January 24, 2018
「ネット中立性の撤廃について、説明できますか? 私たちはワッパーを使って説明します」
バーガーキングの人気メニュー「ワッパー」をインターネットのコンテンツに例えて、ネット中立性が撤廃された世界を表現しているのだ。店員とメニューは作り物だが、お客さんは本物。何も知らずにいつものようにワッパーを買いに来た人たちだ。
動画は「ネット中立性が<撤廃された>」という文字で始まる。
街行く人に意見を聞くが、みんなハッキリと答えられない。
「なので、ワッパーで説明しましょう」と実験が始まる。
タイトルは「ワッパー中立性」。
「1番の方どうぞ」と店員が言う。怪訝な顔でそれを聞く中年男性。彼は「98番なんだがね」と店員に問い合わせる。別の客に対して「あなたはスローアクセスですね」と店員が答える。同じように不審に思った客に対して店員はメニューを示して説明する。
メニューにはこう書かれている。
ワッパー MBPS
スロー MBPS ワッパー 4ドル99セント
ファスト MBPS ワッパー 12ドル99セント
ハイパーファスト MBPS ワッパー 25ドル99セント
MBPS とはメイキング・バーガー・パー・セコンド、つまり1秒あたりのハンバーガーを作る速さのこと。ネットワークの通信速度を示す値 bps に引っ掛けている。
ワッパーが出てくるのが遅いと文句を言う客に対して店員は、「私たちはチキンサンドやチキンフライのほうで儲けたいと思っているので、ワッパーを出すのを遅くしています。チキンサンドはいかがでしょう?」と正直に説明する。
「投票によって中立性が撤廃されたのでね」と説明する店員に、客たちは「もうできてるのに渡してくれないなんて、こんなひどい話は初めてだ」とか「わけがわからない」と憤慨する。その脇を、すぐにワッパーを受け取って帰る人がいる。
「あんた、ワッパーに26ドル払ったの? ウソでしょ?」と驚く客。
だんだんイライラしてくる客たち。やっと最初の男性にワッパーが届くが、店員はまず袋だけを渡して、42秒後にバーガーを袋の中に入れると説明する。
「あと10秒待ってください」と腕時計を見る店員から、待ちきれずにワッパーを奪い取っていく客もいる。
最後に店員役の男性が話す。
「客が食べ物を取りに来るのを見ていると、こっちが偉くなった気になってきましたよ。支配者の感じです」
騙された客たちは、ワッパーのおかげでネット中立性がどんなものかを理解できて「目が覚めた」と話している。最後に中年男性はこう感想を述べる。
「ネット中立性の問題がいかに馬鹿げているかをワッパーが教えてくれた。でもこれが現実なんだ」
そして、バーガーキングからのメッセージが現れる。
「インターネットはワッパーのようであるべきだ。すべての人に平等に」
すべてのコンテンツを平等に扱うというネット中立性に関する規制は、2015年にオバマ政権でようやく成立したものだが、トランプ政権はこれをあっさり撤廃してしまった。これによってインターネット接続業者は、コンテンツごとに恣意的に通信速度を制限できるようになる。「チキンサンドイッチを売りたいからワッパーは抑える」というやつだ。
バーガーキングのグローバル・チーフ・マーケティング・オフィサー、フェルナンド・マシャドはこう言ってる。
「インターネットはバーガーキングのレストランのように、誰をも区別せず、すべての人を歓迎する場所であるべきだと考えています。だから私たちは、ネット中立性問題の潜在的影響に人々の注意を向けさせるために、この実験を行いました」
バーガーキングはこの問題を単純化してミスリードしているという、規制撤廃賛成派の意見もあるが、ハンバーガー屋さんがここまでやるというのは、よっぽどのことなのだろう。とくに、動画配信に関しては深刻な問題になりかねないので、動画好きとしては意識しておきたい。