NEWREEL
Feature

撮影だけじゃない。 離れていても心をひとつにして挑んだ編集。 ポカリスエット「NEO合唱」オフラインエディター田中貴士氏インタビュー

kana kana May 25 2020

先日NEWREE.JPでご紹介したポカリスエット「NEO合唱」の舞台裏。出演者が自分のスマホを使って撮影に挑んだ本作では、編集の作業も同様に、STAY HOMEの状況下で行われた。視点を撮影後に行われるポストプロダクションに移し、編集作業を担当したオフラインエディターの田中貴士さんにインタビュー。リモートでも感動の一篇に仕上がった「NEO合唱」のプロセスには、With コロナ時代におけるヒントが随所に!

dir
Show Yanagisawa
offline ed
Takashi Tanaka
FacebookTwitterLinePocket

コミュニケーション密を落とさないオフライン編集

セレクトし、一本にまとめられたメインパート女子の部。

──大量の素材を編集するにあたり、素材を取捨選択しく際の”基準”をどこに設定されましたか?また使った便利な編集機能があれば教えて下さい。

仕込み段階では、まず、「熱量が高いカット」という監督のセレクトの基準に基づいて、男女それぞれタイムライン上でセレクトをしていきました。機能でいうと、マルチカメラ編集機能を使用してスイッチングするのも面白いかなと思ったのですが、作業の効率化よりも一生懸命撮影してくれた素材と向き合うことが、「NEO合唱」では大事だと思い、特別な機能を使ってはいません。

音と映像をシンクさせた女子メインパートのタイムライン

次に、音と映像をシンクさせた4種類のタイムラインをつくります。①男子メインパート、②男子ハモリパート、③女子メインパート、④女子ハモリパートですね。

そして、シンクさせた素材をラッシュ(試写)しながら、さらにOK出しをしていきました。この作業だけで丸1日かかります。今度は、OKカットをひとつのタイムラインに集約しなおしたら、監督とトーナメント戦式で、使い所をさらに選定して編集を追い込んでいきます。このやり取りには、Zoomを使って編集画面を共有し、ビデオチャットで進めました。実際に顔を突き合わせてやる場合と、そこまで変わらないレスポンスで編集はできたと思います。リモートでも、コミュニケーションの密度を落とさないために、タイムライン整理には気を使いました。重複しますが、誰がみてもわかりやすいタイムラインを作るよう心がけています。

──柳沢監督の話から、このセレクト作業はかなりアツい作業だったことが伺えます。

順をつけるというのは、非常に心苦しい作業でした。頑張った軌跡を感じると残したくなる。でも、そこを淡々とカットしていくのもエディターの仕事なんだなと再認識できましたね。難しかったのが、この「NEO合唱」のゴールをどこにもっていくか。途中、2つの可能性の間で揺れました。こういう状況下だからこそ、がんばって撮影してくれたみんなを均等に出していくべきか、それとも「熱量」を最大限に増幅させる編集に振り切っていくのか・・・。ケースバイケースで求められる編集は変わる、正解の無い難しさも改めて感じました。

2つの可能性まで絞ったあと、ここからどう映像のクオリティをジャンプさせられるかという話になりました。編集ギミックを足してみる?飽きさせない演出をどこに仕込む?いや、「熱量」で推そう、などなど、実際にプロトタイプを作って検証していきます。

最終的に、「熱量」を最優先にした編集に振り切っていくのですが、監督とのやり取りは白熱し、ラストに4回繰り返される「今だ!」という歌詞で、何回目の「今だ!」がいいのか選手権も、それぞれの出演者別に議論を重ねました。Aさんは2回目、Bさんは4回目だよね…と、今思うと途方も無い作業に思いますが、しっかりとタイムラインを整理していたのが功を奏したと実感しています。監督とのやり取りは、見逃していたフレームや表情の発見につながったり、ここは音に合わせたアクションを活かしたいといった、それぞれの狙いを、ワンカットごと積み重ねていくことでまとまっていきました。無駄な作業は何一つもなく、お互いの感情をぶつけあった作業でした。

──結果、ソーシャルディスタンスで離れていてもひとつなんだ、と心が満たされていくような感動の一篇となりました。中でも手応えを感じたパートはどこでしょうか?

たくさんの人がこの「NEO合唱」に参加しているという規模感を、ラストに向かって画面数が増えていくとろで、そして、最後に青空につながっていく”気持ちよい”流れを編集で表現できたのはよかった点だと思っています。


出演者の映像がレイヤー的にどんどん重なっていく、編集のギミックをつかったバージョンも検証された。

──技術的なところになりますが、画面数が増えていくマルチウィンドウもPremiere Pro(オフライン編集用のソフトウェア)上で組んでいるのですか?

81画面分をPremiere Pro上で詰んでから、コピー&ペーストでAfter Effectsにもっていきマルチウィンドウを作りました。Layers2Gridというスクリプトでマルチウインドウをつくったので比較的楽に配置はできました。レンダリングに時間がかかりましたが…。

Premiere ProからAfter Effectsへコピー&ペースト。

──ありがとうございました。最後に、リモートの環境下での作業は、今後選択肢のひとつとなるかと思います。田中さんの考える課題や大切にすべきことなど、「NEO合唱」のお仕事を通して感じたことをお願いします。

リモート環境下で大切にしたいことは、「汲み取る力」と「聞き出す力」だと考えています。(監督が)なぜそう思ったのかを汲み取り、自分で答えを見つけること。わからなければ、ちゃんと聞く。当たり前な事に聞こえますが、意外と難しい。そして、立場や年齢にとらわれることなく、自分の軸を持つとストレスなく進行できると思っています。

技術的には低遅延のプレビュー環境は整いつつあるので、チームの技術環境を整理更新して、新しいやり方に順応していく事で解決できると思っています。

「NEO合唱」での体験を通して、映像業界全体の成長へとつながるであろう貴重な体験ができたと感じています。また、この映像を通して、元気になってくれる人がいると嬉しいです!

田中貴士|オフラインエディター

たなかたかし。オフラインエディター。1991年生まれ。Premiereデビューは16歳のとき。2011年株式会社P.I.C.Sへ入社。翌年、VFX アーティストの格内俊輔氏を師事する。2014年、オフラインエディターとして独立。2018年よりDiamondSnapに所属。早く的確な判断力と、リズムを感じる編集を得意とする。柳沢翔監督作品、乃木坂シネマズ 「鳥、貴族」でもオフラインを担当。代表作にUSJ Nintendo(監督:柳沢翔)や、Microsoft Suface「夢中って無敵だ。」(監督:山田智和)などがある。また、オフライン編集にとどまらず、AfterEffects、PhotoShop、Illustrator、Cinema4D、DaVInciResolveといったツールを網羅し、広告映像、MV、Amazarashiのライブ映像の演出も手掛ける。

kana
bykana

NEWREELの編集者。コツコツと原稿を書く。