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メタファーまみれのオフィシャル“AV”「Good Night Station」

Yogee New Waves角舘健悟とタナカカツキ、それぞれの“色気”をめぐる対談

kana kana Jun 21 2019
左)タナカカツキ 右)角舘健吾(Yogee New Waves)     写真/森本菜穂子

ネオシティポップの第一線を走るYogee New Wavesのフロントマン角舘健悟が、全方位型のクリエイタータナカカツキ(コップのフチ子さん、マンガ「サ道」)に「Good Night Station」のMVを丸投げ。出来上がったのは、あのびしょ濡れAV!? だった。

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新作のミュージックビデオは
アーティストに丸投げ計画

──タナカカツキさんは映像作家としての一面も持ちますが、平成生まれのYogee New Wavesとは世代を超えたコラボレーションとなりましたね。

タナカカツキ(以下タナカ)  MVを作るの、ひっさびさでした。

角舘健悟(Yogee New Waves/以下角舘) 上がったMVをみんなで観て、きれいだね~って。ぴっかぴかで、新しいゲーム買ったみたいな、スゲー!って気分でした。

松田光弘(ビクター/以下松田) Yogeeは、これまで、仲間と一緒に自分たちでMVを作っていたんです。2013年に作った「CLIMAX NIGHT」なんかは、当時ネット上で話題になりました。


Yogee New Waves:角舘健悟(Gt, Vo)、粕谷哲司(Dr)、竹村郁哉(Gt)、上野恒星(Ba)で構成されるYogee New Waves。2013年に活動開始。2014年4月にデビューe.p.「CLIMAX NIGHT」をリリース。2017年5月にリリースした2nd アルバム「WAVES」は、CDショップ大賞2018前期にノミネート。2018年3月に3rd e.p.「SPRING CAVE e.p.」をリリースしメジャーデビュー。3rd アルバム「BLUEHARLEM」を2019年3月20日にリリース。6月からは全国ツアー「TOUR BLUEHARLEM 2019」が決定。

タナカ  2013年なんていうと最近の話じゃないですか。バンドとして急成長ですね。

角舘 最近はそういう傾向みたいです。リリース1曲目から世の中のムードにバチっと当てにいって、結成1年目くらいから大きな箱でやって、メジャーデビューして、そこからお金をかけてセールスを上げていく流れになっている。昔は、結成10年経ってやっときっかけが出来て、そこからサクセスストーリーのはじまりって感じだったから、「まだ結成2年なの?」ってよく言われていました。

松田 Yogeeに関しては、インディーズで活動していた時から人気だったんです。割と各社争奪の体をしていて、気がついたら打ち上げの席にレコード会社の人がいっぱいいる状況でした。

角舘 そういうことだったんだ!CDを沢山くれて気のいい大人たちだなって……。
MVの話に戻ると、今回は、アーティストとやってみたくて、僕らのことを良く知らなくてもいいから、その人に丸投げしようという計画でした。カツキさんのことを知ったのは、僕が日芸の4年生の頃で、当時「virtual drug 」という映像シリーズ(編注 ポニーキャニオンが1992年より発売するビデオシリーズ。タナカカツキによる作品は「ALTOVISION」としてリリース)を集めていたのがきっかけです。その中にカツキさんの作品もあって、すごいの作る人だな~って。通常は、サイケデリックテンプレートみたいなのがあって、例えばレインボウキャンディとか、今ならGoogleの「Deep Dream」みたいなものなんだけど、カツキさんは、サイケデリック文脈とは関係ない別の要素、美しさや、平和さや、のんきさを持ち込んで、ドラッグとアンダーグラウンドとオーバーグラウンドを混ぜかえしている感じが奇妙で好きだったんです。

タナカ (僕の)大理解者じゃないですか!

角舘 (笑)。なんなら弟子入りしたいと思っていました。これ言うの初めてなんですけど。そういうのをYogeeでもやりたくて。オーバーグラウンドとアンダーグラウンドを混ぜて新しい音楽を作ることを。

タナカ 世代も違うし、住んでいる街も違うし、違う環境で育っているけど、お互い作品にシンパシーを感じるってなんかいいですね。

角舘 ロマンティックですよね。

タナカカツキ 1966年、大阪生まれ。1985年、マンガ家デビュー。
著書には「オッス!トン子ちゃん」「サ道」、天久聖一との共著「バカドリル」などがある。カプセルトイ「コップのフチ子」の企画原案を手がけるほか、協会公認のサウナ大使であり、水草レイアウトの世界ランカーでもある(2016年 世界水草レイアウトコンテスト4位)。

タナカ この話をもらった時、僕のことをあまり知らないんじゃないかと思って、自分という人間を、ただのサウナ好きのおじさんではないぞって必死でプレゼンしましたよ。「僕も昔バンドやっててさ~、だから信用してくれてダイジョブやで〜。僕、頑張るし!」ってね。

角舘 確かに、めちゃ喋ってた(笑)。嬉しいです。

ミュージックビデオの出発は「狐の嫁入り」、
しかし到着はAVビデオ

PARAISO島から抜け出した、WAVESたちは
花を愛でる、深い青の島へ辿り着く。
安息の島、
BLUEHARLEM。
(中略)
咲き誇る日々の先に待ち受ける未来は、
どんな形をしているのだろう。
島3部作完です。
Kengo Kakudate (Vo/Gt)

──「Good Night Station」はどういうシチュエーションで生まれた楽曲なのですか?

角舘 あれは、気持ちのいい季節に生まれました。実際に雨は降っていなかったけど、降ったら気持ちいいだろうなって思っていたんでしょうね。「狐の嫁入り」ってあるじゃないですか。あれが森の中で起きていたら、気持ちいいだろうなって、そういう絵を描いてみたんです。そこから曲を書き始めたらいい感じに仕上がった。そんな曲です。

──よく音作りのキッカケに絵を描くのですか?

角舘 たまたま「Good Night Station」に関してはそうでした。「狐の嫁入り」だけじゃなくて、FKA twigsがInstagramでポールダンスをしている映像にも影響を受けてます。ポールダンスってセクシーだし、動きは艶かしい。でも、エロシティズムを超えた美がそこにはあって、脳裏にこびりついてきた。そのイメージが、潜在意識レベルで作品に反映されています。

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cute lil session @thechoreographyhouse

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タナカ 言っていることすごくわかります。やっぱり、映像もそうだけど、色っぽさや艶が必要です。電化製品も、艶めかないと買ってもらえないんですね。コカコーラのボトルのフォルムしかり。艶めくってどういうことかというと、隠れた性的なメッセージが必要だということ。触り心地がいいとか、何かメタファーがないと、なかなか商品って買ってもらえない。

Yogee New Waves – Good Night Station
Dir: タナカカツキ

──ということは、「Good Night Station」のMVにもそういう要素を、当然取り入れていらっしゃると?

タナカ このビデオ、とにかく“びしょ濡れ”にしました。「この性のメタファーを受け取りまくれ」とね。ポールダンスの話を聞いた時は、さすがだと思いました。「それ、よく分かる。おじさんはそれ知っているよ。私なりのメタファーで、びしょ濡れにするから任せとけ。全編ポールダンスをしているようなものにするからね」と、そこは全開で放ちました。

──次画面へのトランジションも、画面をめくっていくような効果が効いていますね。

タナカ ええ、あれもメタファーですね。洋服を脱がすとか、見るとかそういうことですね。

角舘 それ、なんとなく気がついていました。

タナカ それだけじゃなく、画面に人の手が出てくるでしょ。手ってどうしても艶かしくなってしまうんですね。更にめくっているでしょ。エロビデオですね。AVなんです。

角舘 オフィシャルアダルトビデオだったんだ(笑)。

──では、猫の意味するところは?

タナカ  猫は、ほら、流行っているから。猫を否定する人いないでしょう?

──(笑)。角舘さんとビデオ内で、唯一交流するモチーフなので意図があるのかと。

タナカ そういう意味でいうと、男女の出会いや別れ、そういうことが歌詞の中では書かれているからね。婉曲的に、出会いと別れを描いています。

角舘 すごい勢いでまとめましたね(笑)。

──雨にゆれる画面の向こう側は、いろんな質感が混ざり合う、ちょっと不思議な世界ですね。

タナカ それに関しては角舘くんのリクエストがヒントになっています。アニメや写真やイラストも渾然一体となったエッセンスが欲しいと。そういうの大好きなので、「もうわかってるよ〜、そうしようと思ってたしー、もう言われたらやりたくなくなってきた」ってね。

角舘 僕、私服のパーカーで撮影しています。てっきり加工するかと思っていたので、寝間着みたいな格好で行っちゃいました。

タナカ シルエット的に使おうと思ってね。寝巻きでAVに出演したね。

──そのめくった先の世界ですが、未来的だけど植物に囲まれていて、なんだか安心できる、ディストピアを経ての未来都市…そんな印象をうけました。

タナカ めくった先に現れるのは、理想郷です。これも角舘くんから、「みんなが豊かに暮らしている島」というお題をもらっていてね。島といえば植物と共生しているイメージですからね。なんですが、曲を聞いたら、めっちゃ都会でしたから、”ラジオステーション”ですし、じゃあ、森のなかにラジオステーションがむちゃくちゃあったら、どうなるんだろうっていうのを発想しましたね。いっぱいアンテナ立つんだろうな。でも、拓けていないと電波は届かないから、建物は自ずと高くなってくるだろうな…。そうやってイメージして描きました。

角舘 あの絵から、僕は台湾を想像しました。雨が突然降ってきたりムードが近いなって。ちなみに、シャングリラというか“理想郷”のこと考えませんか? 理想郷を思い描き、それのために頑張る。逆算してトライする。例えば恋愛をしました。けれど、その人には浮気癖があって、失敗をして別れてしまうという負の連鎖がある。その問題を解消するには、無人島で二人で住むしかないじゃないですか。そうなってくると、コンビニがないと困るけど、そこで働く人は恋愛対象にならない人じゃないとダメで…。そんな風に考えていくと理想郷ができていくじゃないですか。そういうシャングリラを気持ちの中に持ち続けることは悪いことじゃないと思っているんです。

Yogee New Wavesのバンド名の由来は、ビートルズがインドのリシケシを訪れはまっていた超越瞑想(TM瞑想)の創始者マハリシ・マヘーシュ・ヨーギーに由来する。ちなみに、超越瞑想は古代インドの伝統的な瞑想で、現在ではクリント・イーストウッドやヒュー・ジャックマンも実践している。

──たたみかけるラストは、バーチャルドラッグがきっかけで、カツキさんを知ることになった角舘さんには嬉しい展開ですね。

タナカ 僕はそれを知らなかったですからね。いや、ほら納期もあるからね。素材を使いまわそうと。あそこは、メッセージを受け取ったわけじゃなくてね。

角舘 (笑)。最後に持ってくるんだ〜って思いました。溜めたなって。最初にYouTubeに公開されていた、ショートバージョンは、ここからっていうところで切れちゃうんですけど、フルで見れるようになってよかったです。