”不可能”倍増! メイクアップアニメ「資生堂THE PARTY BUS」
柳沢翔監督インタビュー
1,000万回再生を越えた、イケメンがメイクの力で女子高生に変身する資生堂のハイスクールガールCM。その映像制作チームが繰り広げる今作は、メイクの妖精が踊るメイクアップアニメーションだ。
ダイバーシティな世の中におけるハラスメント・差別と表現
──LGBTQと同様、人種も多様なキャストですね。
はい。SHISEIDOブランドは世界で展開していることもあり、国籍をバラけさせる、という意識はありました。
ギミックの効いた映像表現 vs ナラティブ
映画「ラ・ラ・ランド」のタップダンスのシーンのような、マジカルなパープルな空。
「カラリストのベンに提案してもらったパープルはLGBTQのお話なのでぴったり。幻想的な画がつくれました」
──ところで、柳沢さんは、ギミックの効いた映像表現、そしてナラティブ(物語)という両軸に対して、どのように考えているのでしょうか?
いや、ずっーと悩んでますね。もともと油絵を描いていた僕が、CMを作っていて、でもファインアートの人間っていう気持ちは変わりません。アートって言うとちょっとアレですけど…つまり、ビジュアル脳タイプなんですよ。
そういうタイプが、自分が特化した脳味噌(手グセ)で作品を創ると、「おおーー! カッコイイですね、ありがとうございます」って言われたりするんです。でも、自分の手グセや得意分野じゃない「物語」で悪戦苦闘して泥んこになって作品を創ると、時々、何とも言えないリアクションをされる時があるんです。
「刺さっちゃいました」とか、試写で泣かれたり、エモーショナルなリアクションが返ってくる。やっぱ手グセってあかんな。って思いますね。僕みたいな人種は、ビジュアルに感情移入できるんですけど、そうじゃない人は“自分ごと化”できないんだろうって。それを放棄しちゃいけないよなって思います。プロとしてやっているからには、やっぱり感動してもらいたいし。「物語ってなんだろう」という興味から、物語の仕事を多く受けるようにしています。
でも、ずーっともがいてますけどね。そんなすぐに脳味噌切り替わんない。
「THE PARTY BUS」のキャスト&スタッフのみなさん
先日、漫画家の椎名うみさんとお話しする機会があったのですが、椎名さんは物語を考える時、「コクピットに乗る」という表現をされてて。頭の中に埋まってる「言葉にできない」感覚・感情を目指して、キャラクターの中に入って操作する感覚。もしくは、「自転車が倒れない感覚を頼りにべダルを漕ぐ感覚」だと。
自転車が倒れない感覚というのが、物語がちゃんとうねっていく構成で、ペダルを漕ぐというのがキャラクターを生き生きと動かすこと…なのかな? うむむむ、僕にはまったく無いんですよね、その感じが。頭の中にある「言葉にできない感覚」を掘り出す感じが分からないんです。感情じゃなく、悪い意味でハッキリ見えちゃってるんですよね、絵が。だから柔らかさが無いというか。
椎名さんとの話は本当に興味深かったです。鋭い。話すと長くなっちゃので、いつかNEWREELで対談を企画して欲しいです(笑)。
前に、山戸結希さん(映画監督「21世紀の女の子」)に「柳沢さんは頭の中にあるお城のイメージを、目の前にある砂場の砂を使って寸分の狂いもなく作らないと気が済まないタイプですよね?」と言われ、ああ、そうかも〜と。でも、1ミリも狂いのない砂の城って、実際見たら面白くなさそうだなーって。
ロジカルで狂いのないアートと、感情で作られたアートでは、後者のほうが僕は好き。でも僕は前者じゃないと気が済まないんですよね。
──もし、「メイクの力」が柳沢監督の背中を推してくれるとしたら、挑戦してみたいのはやはり…
寸分の狂いもない、巨大なお城ですかね。
制作スタッフ
【CAST】
かぐや姫:エレーナ・アン
ゾンビ侍:福士 リナ
ドラキュラ:えんどぅ
【STAFF】
Director:柳沢 翔
Production:タワーフィルム
Creative Director:小助川 雅人(SHISEIDO)
Producer:石井 美加(SHISEIDO)、今井 義人(TowerFIlm)、木島 正博(TowerFIlm)
Copy Writer:植木 彩(SHISEIDO)、Mike Burns(SHISEIDO)
Camera:上野 千蔵
Lighting:西田 真智公
Production Designer:宮守 由衣
Stylist:酒井 タケル
Hair & Make:計良 宏文、百合 佐和子、林 佐知子、中村 潤、黒木 久美子、石塚 由香、松井 怜、進藤 南南(SHISEIDO)、奥戸 彩子、鈴木 翠、尾関 麻衣、原田 聖子(OFFICE SABFA)
Choreographer:PSYCHE
2D Animation:平岡 政展(キャビア)
Title layout:渡邊 勝城(Helixes)
Colorist:Ben(TOKYO)
Editor:田端 華子(アクティブシネクラブ)、斎藤 峻、宇都宮 竜、佐藤 真由、宮本 雫、玉川 聖子、高田 一温
Post Production(EED):家元
3D CG:slanted
Post Production(MA):デジタルエッグ
MUSIC Production:YUGE inc.