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デヴィッド・ボウイの人柄が通じるマクラウド兄弟のショートフィルム  「ASHES TO ASHES’ CLOWN SUIT STORY」

金井哲夫 金井哲夫 May 1 2021

デヴィッド・ボウイが1980年にリリースした「アッシェズ・トゥー・アッシェズ」のMV撮影の際の話を元に、英コメディアン、アダム・バクストンが監督したショートムービー。デヴィッド・ボウイの人柄がうかがえる、なかなか深い話。

dir
Adam Buxton
prod co
The Brothers McLoed
ani
Greg McLoed
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デヴィッド・ボウイが1980年にリリースした「アッシェズ・トゥー・アッシェズ」のMV撮影の際、当時ADを務めていたマイク・ディグラムが直接ボウイから聞いた話を元に、イギリスのコメディアン、アダム・バクストンが監督したショートムービー。なかなか深い話で、ボウイファンには彼の人柄が伝わるうれしい内容だ。

撮影が休憩に入り、ボウイが椅子に腰掛けると、そばにいたADのマイクに「ジギーをくれないか」と頼む。
「ジギーって?」とマイクが聞き返すと、「ジガレットだよ」とボウイ(これは、ジギー・スターダストに引っ掛けてるんだね)。
マイクはボウイに、今までいちばん印象に残ってる出来事は何かを尋ねた。するとボウイは「アッシェズ・トゥ・アッシェズ」の撮影時のエピソードを聞かせてくれる。
道化師の姿をしたボウイが、女の子たちをひきつれ、海岸を歩くシーン。後ろからはでっかいブルドーザーが追ってくる。
それを望遠レンズで撮影したいたのだが、犬の散歩をしているおじさんがボウイとカメラの間に入ってきてしまった。
そこで撮影が中断され、ボウイはカメラ脇の椅子に座っておじさんが通り過ぎるのを待っていた。
やがておじさんがカメラの近くに来たとき、監督が彼に言った。
「この人、誰だかわかってる?」
するとおじさんは「もちろんさ。道化師の格好をした¯˘¿!±☆}_?(女性蔑視発言的なここじゃ書けない最低の侮蔑語)野郎さ」と答えた。
ボウイは、その出来事をとても大切に思い、いつも「分は道化師の格好をした¯˘¿!±☆}_?野郎に過ぎない」という原点に立ち返るようにしているとアダムに話した。

マイケルはこの話を、ボウイが亡くなった2016年1月に追悼のメッセージとしてフェイスブックに投稿した。
「子どものころから憧れてたヒーローが、大人になってもまだヒーローでいてくれたことを嬉しく思う」と彼は感想を述べている。

話はもどってショートフィルム「ASHES TO ASHES’ CLOWN SUIT STORY」の制作は、数々のアニメーションを作っているグレッグとマイルズのマクラウド兄弟。2000年から2人でThe Brothers MacLeodというプロダクションを立ち上げて活動している。グレッグはイラストとアニメーションと監督を担当。マイルズが脚本と声優を担当(ただし、このアッシェズ・トゥ・アッシェズの音声はバクストン)している。ディズニーを始め、MTVやニコロデオンなどのメジャーなメディアで活躍している。作品のテイストは非常に多彩なので、どこかで見たことがある感じを受ける。たぶん見てるはず。

フランスの非営利団体フィルム・プル・アンファン(子どものための映画)協会が行ったグレッグのインタビューで、彼はデビッド・リンチに影響され、「ツインピークス」が大好きで、生まれ変わったらツインピークスの世界に住みたいとも話している。ポップでかわいらしい作品からは、ちょっと意外な気もするが、デビッド・リンチの幻想的な世界はある種漫画的にも感じられるし、矛盾はないかも。ただ「生まれ変わるとしたら何になりたいか」との問には「バックスバニー」と答えている。

これより前の2014年に、アダム・バクストンは、マクラウド兄弟と別のデヴィッド・ボウイのアニメーションを制作している。これが今回の動画の下地になってるみたいだ。

これは、ボウイがブライアン・イーノとプロデューサーのトニー・ビスコンティとコラボした「ワルシャワの幻想」の録音風景。イーノが考案した、ランダムに言葉のカードを選んで歌詞を作り出す「オブリーク・ストラテジーズ」を使って即興で録音するという内容だ。

実際、「ワルシャワの幻想」の歌詞はボウイが作った謎の言語で、ボウイ自身は「意味はない」と言ってる。でも動画では、意味のある歌詞を作ろうと模索する。

最初に選んだカードの言葉が「なんだか買い物リストみたい」なので、もう一度選び直すと「言語を作る、イタリア語っぽい」と出た。歌ってみたところ、イーノがもう一度やろうと提案すると、「2テイクも録ったんだから、もうごめんだよ」とボウイがキレる。そうしてあの歌詞になった、というジョークだね。

もうひとつ、ぜひ紹介しておきたいマクラウド兄弟の作品がある。2014年に公開されて多くの賞を獲得した「365・ワンイヤー・ワンフィルム・ワンセカンド・ア・デイ」だ。2013年に起きた毎日の出来事を1秒間のアニメーションクリップをつないで表現したもの。7分間だけど、まる1年をかけて制作された「大作」と言えるよね。

金井哲夫

雑誌編集者を経て、フリーランスで翻訳、執筆を行う。