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電気グルーヴ完全復活第一弾「Set you Free」のMVに
海上を突き進むおじさんの矜持を感じた

金井哲夫 金井哲夫 Dec 4 2020
dir
Hideyuki Tanaka
m
Denki Groove
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いろいろあったけど、2年半ぶりに電気グルーヴが帰ってきた。新しいマネジメント会社macht inc.から初となるシングル「Set You Free」のMVが心地いい。

最初に空から1台のラジカセが降ってくる。海に落ちるとそれが魚の群のように嬉々として泳ぎ出す。やがてギターやピアノが加わり、コモドールのPETと思しき懐かしのパソコンやシーケンサーみたいなもんも現れる。

そこに繰り返される歌は、20世紀から続けてきた音楽人生を振り返り、みんなを自由にするために頑張ってきたと自分たちを労っているように聞こえる。「先住民」という言葉には、キャリアを積んできたミュージシャンの矜持が感じとられる。おじさん世代にはグッとくる。それが電気グルーヴらしい透明感のあるサウンドに乗って清々しく、爽やかな空気感と躍動感、それにちょいと笑えるユーモアのある映像がそれをさらに引き立てている。

監督は田中秀幸。フジテレビの「ウゴウゴルーガ」やNHKの「週間こどもニュース」など数多くのテレビ番組でキャラクターデザインや制作に携わり、CM、ゲーム、MVも多数手がけている。とくに、電気グルーヴのピエール瀧とは付き合いが古く、MV制作の他、一緒にVJユニットを組んで活動していたこともある。電気グルーヴのMVは、ピエール瀧、石野卓球のソロ作品も含め、これまでに多数制作している。

今回の作品について、田中監督は「久々の新曲ということで、登場感(そのまんまですが)や電気の歴史を感じて、しかも電気らしい作品にしたいと思いました」と話している。この曲は今年のフジロックフェスティバルで公開される予定だったが、新型コロナのためにバーチャル開催となってしまった。その代わりに、ヘッドライナーとしてラストにMVが流されることになった。田中監督も、そこをかなり意識してアイデアを考えたという。

MVはフルCG。田中監督は「波しぶきや光の雰囲気をCGチームに伝えるために、ボートに乗ってリファレンスをiPhoneで撮影をしてきました」と話している。それを制作に参加した複数のCGチームと共有して、頭の中のイメージを伝えた。最後に現れるピエール瀧と石野卓球は、3Dスキャナーで2人の顔をスキャンして制作しているとのことだ。

金井哲夫

雑誌編集者を経て、フリーランスで翻訳、執筆を行う。