カリフォルニアに生まれ、ロンドンとテルアビブで育ち、現在ニューヨークで活動するモーションデザイナーでイラストレーターのユーバル・ヘイカー氏が制作した、新型コロナウイルスの感染防止啓発アニメーション。日常の対人関係から次々とウイルスが感染してゆき、深刻な結果がもたらされる様子をコミカルに描いている。
国際保健機関(WHO)が、4月、新型コロナウイルスに対する認識を高めるためのアート作品の公募を行った際、ヘイカー氏はそれに応じて「新型コロナウイルスが、ひとつの大きな人間関係のシステムの中で伝染してゆく」様子を表現しようと考えた。
締め切りが間近なので、ラフな感じに仕上げようと考えていたのだが、結局、いつまでも細部の詰めを重ねるようになり、気がつけばWHOの締め切りは過ぎ、プロジェクトは宙に浮いてしまった。CMやMVを手がける彼だが、幸か不幸かフリーランスの仕事が激減してしまったお陰で、この作品に続けて集中することができ、1カ月半後、ようやく仕事が入ったので、仲間を集めてアニメーションを完成させることができたという。
感染の流れがわかりやすいように、コミックのコマ割りのスタイルを採用したという。だが、それぞれのコマが独立したアニメーションになっていて、感染の瞬間とその後を表している。ウイルスの伝播にともない、話の中心となるコマが移っていくのだけど、前のコマでもその影響のアニメーションがひっそり続いている。このあたりの複合的な構成がとても面白い。
アニメーション制作の段階では、メインのコマが今どこにあるかをわかりやすくするために、赤い枠で囲って作業していたそうだ。その制作の様子が下の動画でわかる。
人がコマを移動して誰かに接触するごとにウイルスが広がっていくわけで、コマの境界線はソーシャルディスタンシングを表しているようにも見えるんだけど、残念なキャラクターがときどきコマを飛び出して自由に振る舞ってしまう。こういうヤツ、いるよねー。そこもうまく表現している。
音楽のリズムは心臓の脈拍を表していて、最後にピーッと止まってしまう。しかし、アニメーションはそこからまた次につながり、同じ現象を繰り返す。とてもコミカルな内容で笑ってしまう。こうした笑える要素は、多くの人に見てもらうための大きな力になる。マドリードでは再ロックダウンだそうで、メルボルンでも外出禁止令が出た。ニューヨークもまた感染が広がり出して、ロックダウンが検討されている。新型コロナはなかなかしぶとい。これからインフルエンザの季節にもなるし、気を緩めるとガーッと盛り返してくる。みんな本当に気をつけようね。