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アシュニコの新作「Cry」は怒りの少女戦士による
血みどろの“お仕置き”

金井哲夫 Sep 8 2020

前作の「Stupid」がTikTok でバズりまくり、世界の注目を集めたロンドン発のミュージシャン、アシュニコ。新作の「Cry」は、3つの顔を持つ怪物となった彼女が自分の彼氏と寝た女を追い詰め八つ裂きにする、怒りの修羅場ファンタジーだ。

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Mike Anderson
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Mike Anderson
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Ashnikko (feat. Grimes)
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青く長い髪型から「ラリった初音ミク」と称されるアシュニコは、前作「Stupid」(バカ者という意味)のMVで自分を裏切った元彼を斧で殺してまわり、今回の新作「Cry」では、自分の彼氏と寝た女を八つ裂きにする。

何も彼女は残虐を志向する危険人物というわけではない。DAZEのインタビューによれば、彼女はアメリカの保守的な地域の、比較的保守的で男尊女卑の傾向がある(その地域では当たり前の)ごく普通の家庭に育ったという。しかし、大きくなってからSNSで女性解放主義について知って衝撃を受け、ジェンダーや性的指向について独学で勉強した。

ボーイフレンドから手ひどい仕打ちを受けたり、ネットで心ない書き込みをされたり、辛い思いをたくさんしてきた。とくに、ラップ・アーティストのためのプラットフォームGeniusでMVを作っていた時期は、MVの視聴者は男ばかりで、罵声を浴びせられ、音楽業界で女性でいることは「馬鹿みたい」だとまで感じていた。「男の4倍のクソを食らう」と話している。

そんな悔しい思いを重ねてきた彼女は、自分を奮い立たせるために歌を書いている。彼女の歌を聞いたとき、女の子たちに自信を持ってもらうためだ。

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「Cry」に登場する顔が3つの怪物はアシュニコ自身。乗っていたメカが爆発して宇宙に投げ出された彼女は、妖精の力によって怪物に変身した。その変身シーンはセーラームーンっぽいけど、彼女の腕にはムーンスティックの絵のタトゥーがあるそうで、セーラームーンを意識していることは確かだ。ただし、正義の味方の美少女戦士ではなく、「お仕置き」をする怒りの化身だ。

アシュニコの手首に刻まれたムーンスティックのタトゥー。

監督は、映像作家でアニメーターのマイク・アンダーソン。アメリカの美術大学ロードアイランド・スクール・オブ・デザインで絵画を学んだが、映像制作とアニメーションは独学。作品はちょいとグロい感じのものが多く、ほぼすべてにヘンリー・ムーアの彫刻みたいな胴体の一部が欠損した異形の人物が登場する。

代表作に、SXSW 2017でプレミア公開され、360度動画として初めてVimeoの「Best of the Year」賞を獲得した「the Giant」がある。アンダーソン監督の多くの作品がそうであるように、粘土でキャラクターやセットを作り、すべてを3Dスキャンして、モーションキャプチャーと組み合わせてデジタル・アニメーションに仕上げている。

「Cry」は、粘土ではなくフルCGによる3Dアニメーションだ。アニメっぽくて、3Dゲームっぽいけど、スピード感が気持ちいい。文明崩壊後の世界を舞台にしたアドベンチャーゲームが大好きというアシュニコの世界観にも、びったりはまっているようだ。

雑誌編集者を経て、フリーランスで翻訳、執筆を行う。

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