アメリカのダンスユニット、メジャー・レイザーがマーカス・マンフォードをボーカルに迎えてリリースした「Lay You Head On Me」のMVは、ロサンゼルスで繰り広げられる空手と馬のスタントの連続……となるはずだったのだが。
このMVの監督をすることになったフィリップ・ニルソンにとって、それは「夢のプロジェクト」だった。その空手と馬のスタントの構想をメジャー・レイザーに話したところ、彼らも乗り気になり、最終的に、世界中のキャストを使ったメイジャー・レイザーのカンフービデオにしようということになったのだ。
ところが新型コロナウイルスの危機が迫り「ふざけてる場合じゃない」と悟ったフィリップ監督は、脚本を一から書き直した。新しいコンセプトは「ひとつの大きな、グローバルなグループハグ」。ダンスミュージックが大きなグループハグでみんなを団結させるというものだ。
歌詞の内容は「今までに負った傷は、ここへ来る道の上の石ころみたいなもの。キミのすべての選択がここにつながってる。だからボクに頭をもたせかけて。怖がらなくていいよ……」みたいな。これがどうカンフーになるのか、ちょいと想像がつかないけど、すごく見てみたい気もする。
コンセプトを変更したことについてフィリップ監督は、Little Black Bookのインタビューでこう話している。「自分にとって、今、ポジティブなバイブを送ることが超重要だった。あまりにもダークなもので満ち溢れているからね」。
当初は、いつものとおり出演者のオーディションを考えていたのだが、このご時世なのでInstagramとTik-tokでキャスティングを行った。選考したアーティストに自分で撮影した動画を送ってもらい、編集するというアイデアだ。出演者を決めて、自分のビジョンを理解してもらった後は、物事が非常に速く進んだという。
振付けは、あのApple HomePodのCMなどでおなじみライアン・ハフィントン。彼が丁寧な振り付けのチュートリアルを制作し、「最善を尽くして欲しい。完璧である必要はない。自分らしく。そのままのみんなを私たちは見たいんだ」との注文を添えて参加者に配布した。フィリップ監督は、カメラの設定や撮影内容に関する指示を全員に送った。
参加アーティストは、28カ国208名のダンサーとミュージシャン。プロも含まれているが、ナイジェリアの孤児のための学校ドリーム・キャッチャー・アカデミーの子どもたちなど一般のキャストも数多い。ブラジルのレナンとレナートの兄弟は、一人が盲目のためもう一人のサポートでいっしょに踊っている。フィリップ監督もカメオ出演するはずだったのだが、何度練習してもうまく踊れず、代わりに子どもに出てもらったそうだ。
大量のクリップを、かき集めの映像としてではなく、1本の作品になるよう構成するのがいちばん苦労した点だと、フィリップ監督は話している。早い時期から、テンポの速い映像にして最後は楽器の音でクライマックスになるという構想が固まっていた。フィリップ監督は時間をかけてじっくり動画クリップを選定し、同時に、フィルムエディターのアンドレアス・アービドソンが10日間の突貫作業で編集を行った。
たしかに、ポジティブなバイブががんがん伝わってくる。なんだかすごく気持ちが晴れる。素晴らしい動画クリップがまだたくさんあるので、コロナ騒動が収束するまでの間に、新しいバージョンを作るかも知れないとフィリップ監督は話している。
ハフィントンさんが振り付けチュートリアルの動画を公開してくれたら、もっと広がりそうだよね。