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トキモンスタの「Fried for the Night」は
グロそうで美しいエフェクト山盛り

金井哲夫 May 12 2020

韓国系アメリカ人DJでミュージシャンのトキモンスタ。彼女の「Fried for the Night」(和訳:一晩薬漬け)のMVは美醜の狭間を行き来する絶妙なトリップビデオだ。

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Romain Laurent
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Romain Laurent
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韓国系アメリカ人DJでミュージシャンのトキモンスタが3月に発表したアルバム「Oasis Nocturno」に収録されている「Fried for the Night」のMV。アースギャングをフィーチャーしたこの曲のタイトルの意味は「一晩薬漬け」といったところ。夜に駐車中の車を覗くと車内は煙で満ちていて、その紫色の煙の中からアースギャングの2人が顔を出して歌い出す。

がっつり三密なホームパーティーに集う人たちの体からは、煙がもくもく出ている。そこから抜け出た1人の男性の目がビー玉にみたいになるあたりから、さまざまな小技的なエフェクトが目白押しに登場する。おもに人々の顔が変化するのだけど、下手にやればグロい映像になりそうなところが、なんだか美しい。映像のどこを切り取っても、1枚の絵として鑑賞できる感じ。

監督を務めたロメイン・ローレントはロサンゼルスで活躍する写真家で映画監督。フランスのアルプス地方で生まれ、パリ装飾美術学校(ENSAAMA)でプロダクトデザインを学んだ後、パリにあるアニーメーション学校として名高いゴブランで写真を学んだ。工業デザイナーとしてキャリアを開始したが、面白くないので写真家に転向し、写真の加工やエフェクトに凝り出したという。

監督のホームページに掲載されている作品を見ると、不思議な画像や映像であふれている。「HALF MOVING」(半分動く)と分類されたGIF画像はとてもアーティスティックだ。このMVに使われている効果も多い。どれも画面のデザインがよくて、細部まできっちり丁寧に作ってある気がする。だからグロくなりがちな映像が美しく仕上がっているんだろうね。神は細部に宿るって、こういうことか。Photoshopとワコムのタブレットでがりがり加工しているとのことだけど、このMVのようなムービーでは何を使ってるのかちょっと不明。

WEPRESENTのインタビューによると、十代のころにスパイク・ジョーンズが監督したダフト・パンクの「Big City Night」に衝撃を受け、さらにミシェル・ゴンドリーのクリエイティブなプロセスに大変に感化された。外へ出て、なんでもいいから撮影するのが大好きだというローレント監督は、「正しい場所、正しい光を見つけて、アングルを決めて、あらゆるプロセスに、めちゃくちゃ頑張って、寝ないで、力をつぎ込むやり方が大好きなんです」という。作品の完成度が高いのもうなづける。「アイデアがあれば、それを阻むものは自分しかない。だから作るしかない」と話している。

MVの中でお姫様の格好をしたトキモンスタの目が花火みたいにバチバチする場面があるけど、ローレント監督のホームページの自己紹介(ABOUT)を開くと、彼自身の目がバチバチするGIF動画貼られていて笑える。よっぽど好きなのだね、このエフェクト。

雑誌編集者を経て、フリーランスで翻訳、執筆を行う。

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