AppleがまたしてもiPhone11 Proを使ったびっくり作品を発表した。ロシアのサンクトペテルブルクにある世界最大級の美術館エルミタージュ(国立ロシア美術館)を、5時間19分28秒かけてたーっぷり見せてくれる。しかも、編集なしのワンカット。途中で充電もしていない。撮影後にはまだバッテリー残量が19パーセントあったとのこと。
国立ロシア美術館は、19世紀に建てられたミハイロフスキー宮殿を中心に、歴史的建造物や庭園で構成されている。この動画では、その中の45のギャラリーと劇場を巡り、588点の芸術作品を紹介している。ただ美術館内部を映すだけではなく、ときどき人が現れてダンスを見せたり、フィナーレではキリル・リクターのピアノ三重奏に合わせてダンサーたちが群舞するなど、アート作品に仕上がっている。
撮影は休館日の月曜日に行われたが、ワンカットなのでミスは許されない。6時間ぶっ続けでノーミスのテイクを撮るために、数カ月かけてみっちりリハーサルを重ね、さらには遠隔で動画撮影機能をコントロールするアプリも開発したという。
監督は、モスクワの演劇学校を出て全ロシア映画大学で映像を学んだ29歳のアシーニャ・ゴグ。ショートフィルムで数々の賞を受賞している。「この作品は時間の中のつながりを表現しています。時間を超えた芸術と、現代生活と最新テクノロジーとの出会いです」とゴグ監督はArtnetの記事の中で話している。
彼女の母親はモスクワにあるトレチャコフ美術館でキュレーターを務めていた美術史研究家で、小さいころから母の蔵書を見てインスパイヤーされている。そのため、ファインアートの捉え方がひと味違うのだろう。それがよく現れているのが、2007年に発表した「CENTENARY OF THE MUSEUMS」(美術館の100年)という作品。これがめちゃくちゃ美しい。
音楽にはジャズサックス奏者アントン・シュワルツ、テクノミュージシャンのムジュースことローマン・リトビノフ)、作曲家の小栗克裕、ガブリエル・プロコフィエフ、キリル・リクターらが参加し、サウンドトラックがApple Musicから「Hermitage」という同名のタイトルで発売されている。
実際の撮影風景は、このメイキング動画で見ることができる。監督をはじめとする各スタッフのインタビューも面白い(日本語字幕にすると、なんとなくわかります)。とくに、1:52あたりから始まるバックアップとモニター用のカメラの説明は興味深い。3台のiPhoneをひとつのリグにまとめている。
新型コロナウイルスのせいでロシア旅行に行けなくなっちゃった人たちも、ピロシキでも食べながらこれを大きなテレビ画面で1日眺めていれば、行った気になれるはず。