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スーパーボウル2020のCMで一際光っていた
「Alexa以前の世界」を再現したAmazonの作品

金井哲夫 金井哲夫 Mar 18 2020

毎年恒例のスーパーボウルCM合戦。各社工夫を凝らしたCMが目白押しのなか、何かと話題となっていたAmazonのCMを未公開シーンとともにご紹介。彼らが考えるAlexa以前の世界とは……?

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Steve Rogers
prod co
Somesuch x Revolver/Will O’Rourke
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2月にアメリカで開催されたスーパーボウル2020に向けたCMだ。全米の1億人近い人がテレビで観戦すると言われている超大イベントのため、さなざまな企業が30秒で約6億円とも言われる放映料を支払って力作CMをぶつけてくる。そんな中でも、かなり出来のいい、というかしっかり作られた作品が、このAmazonの音声アシスタントAlexaのCM。その他のスーパーボウル向け秀作CMは、これとは別にまとめて紹介します。

アメリカで大変な人気を誇るコメディアン、エレン・デジェネレスと女優ポーシャ・デ・ロッシュのカップル(実生活でも夫婦)が出かけようとしている。エレンはAlexaに暖房を切るよう指示し、「Alexaがなかったころは、みんなどうしてたと思う?」とポーシャに問いかける。そして、Alexa前の時代のエピソードが始まる。

1.お屋敷の奥様が女中のアレッサに、温度を2度下げてと命令する。

2.女王が宮廷道化師アレクサインにジョークを言えと命令する。道化師は「知りませんよ、見ればわかるでしょ」と答える。

3.新聞を配る少年アレックスに今日のニュースはなんだと男が尋ねると、「気にするなよ、どうぜ全部フェイクだし」と答える。

4.幌馬車の男が相棒のアルに「オレの好きな曲を演奏してくれ」と頼む。アルが壺を吹くと「次の曲」と男が命令する。

5.洗濯している女性がもう一人の女性アレクシーに面白い話を聞かせてと頼む。彼女は「地球は平らで、魔女があの男のズボンを盗んだ」と話す。

6.どこかのお姫様が、伝書鳩のアレクサミスに王子への恋文を託す。

7.大統領が秘書のアリシアに、テープの消去を忘れないよう私に声をかけてくれと頼む。秘書は「I ain’t deletin……」(私は消さないわよ)とつぶやく。これはTwitterとかで流行ってるミーム(テンプレネタ)なんだけど、1973年のウォーターゲート事件で、ニクソン大統領の執務室の会話を録音したテープを誤って消しちゃったと、秘書が裁判で主張した(ホントは故意に消したに違いないのだけど)事件になぞらえている。

「Alexaの前のことなんて、わからないわ」とポーシャ。エレンは車のAlexaにお気に入りの曲をかけてと命令すると、あの壺ソングが流れる。

監督は、オーストラリア出身のスティーブ・ロジャーズ。オーストラリアでモーション・グラフィックスの会社を運営していたときにイギリスのテレビ局から声がかかり、セックス・ピストルズのマネージャーだったマルコム・マクラーレンと、アイランド・レコードの創業者クリス・ブラックウェルが仕掛けた新バンドのドキュメンタリーを制作した。そこからCM制作に目覚め、CMプロダクションRevolverを創設。後にアメリカのCMプロダクションBiscuit Filmworksと契約してからは、カンヌ・ゴールド・ライオン6回、D&ADのイエローペンシルなどなど、世界中で数多くの賞を獲得し、国際的に大人気の監督となった。

代表作には、シュウェップスのCM、タスマニアの水には魔法のような力があると主張するオーストラリアのビールJames Boag’sのCM、宇宙に飛ばされた実験動物のチンパンジーが地球に帰還する世界自然保護基金のCM、じいさんばかりのミッション・インポッシブルで「ダメだこりゃ」みたいなフランスの有料テレビ局 CANAL+のCM(映画が古くなる前に見ましょうという宣伝)など多数。

……などと原稿をダラダラ書いていたら、このCMの長いバージョンを発見した。Amazonの説明では「Before Alexaを見てくれたよね。でも全部はまだ見せてなかった。このボツバージョンをどうぞ」とのことで、ボツになった2分間のやつもある。未公開シーンの説明をしておこう。

幌馬車の後に登場する道化師はジョークを言う。
「疫病(Plague)のこと知ってます? 半分の人だけかかります。この言葉には二重の意味があるから……」

放送されたバージョンにはなかったエジプトのミイラのシーン。途中で包帯(?)がきれると、男は書記のアレクシオスに「買い物リストにトイレットペーパーも」と命じる。

イギリス軍とドイツ軍の高官が会談している。イギリス軍の高官は「ジェネラル・フーバーの和平案に合意します」と言うが、通訳のアレクサンダーは「あなたはトラウザー・プーパーです」(ズボンにウンチもらす人)と告げてしまい、相手を激怒させる。

さらに道化師。「もうひとつ……」と食い下がるが引きずり出される。

以上。疫病とかトイレットペーパーとか、妙にシンクロしてて怖いかも。

金井哲夫

雑誌編集者を経て、フリーランスで翻訳、執筆を行う。