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ポートランドの「どこか違うところへ行こう」観光キャンペーンCMが
かなり違うところを行っている

金井哲夫 金井哲夫 Feb 13 2020

ポートランドという美しい街の観光宣伝用CMにしては変な感じ。YouTubeのコメント欄にも「地獄のようにキモい」という書き込みが……! 一体全体どうしてこうなった!?

ani
Joseph Melhuish, Parallel Teeth
prod co
Strange Beast
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アメリカの西海岸、カリフォルニア州とワシントン州の間に挟まれたオレゴン州にある、ポートランドという美しい街の観光宣伝用CMなんだけど、なんだこれ? な感じ。YouTubeのコメント欄にも「地獄のようにキモい」とか書かれたりしてる。

家の前に立っている女の子に、「自分の中に、なんか違うって感覚ない? あるよね」と、ナメクジが寄ってきて声をかける。
「古い本の匂いとか、木肌に映えた甘美なコケの上に指を滑らせる感覚がない。洞窟ワインもない。寝る前にパイをたらふく食べるとか、空からお水を飲む感じ? その感覚が、今すぐポートランドに行きたがってる」
そんなふうに、ナメクジ(ポートランドでよく見られるバナナナメクジってやつらしい)は、ポートランド名物の世界最大の古書店や、豊かな森や、洞窟で作られるワイン、グルメ、きれいな自然などを並べて彼女の頭の中の「なんか違う感覚」ちゃんを誘う。

キモいとは思わないけど、なんか妙に気になる。むしろかわいい。かわいいけど、なんか変。ポートランドは人口およそ530万人というから、北海道全体と同じぐらい。けっこう大きな都市で、自然豊かで治安もよく、そもそもアメリカでは常に住みたい街の上位に位置する人気の街。昼は銀行員で夜はピアニスト、みたいなクリエイターマインドを持つ人が多く暮らす街としても知られている。また、スローライフスタイルの雑誌KINFOLKの本拠地であり、隣町のビーバートンにはナイキの本社がある。そして、そして、東京にも支社がある世界的な大手広告代理店Wieden+Kennedyの本社があるところだ。

なんかあるに違いない、と思ったらや、やっぱり代理店はWieden+Kennedyで、制作したのがロンドンのStrange Beastという、けっこうメジャーなプロダクションだった。

この「Meet Portland」(ポートランドをよろしく)は、キャンペーの中のメインの30秒テレビCMで、アニメーターのジョセフ・メルフイッシュパラレル・ティースによるもの。他にも、「Slurp」(ずるずる)や「All The Beers」(すべてのビール)など、同じテイストの15秒CMがある。

これは、ポートランドの観光協会トラベル・ポートランドの「どこか違うところへ行こう」という冬期観光キャンペーンのCM。同団体の「戦略」は、ターゲット市場に向けて、常識外れの可笑しなテレビCMを流すというものだった。どれも同じに見える観光宣伝の中で目立つことを目標に「ポートランドの価値、特徴、ユーモアのセンスを楽しく」紹介して、誰も彼もではなく、このCMに波長の合う人たちを呼び込みたいと、トラベル・ポートランドのマーケティング担当者は話している。なるほど、ポートランドの他にはない面白い部分を、それに相応しい面白い形で表現したわけね。

金井哲夫

雑誌編集者を経て、フリーランスで翻訳、執筆を行う。