エド・シーランのニューアルバム「No. 6 Collaborations Project 」に収録された「Put It All On Me」のMV。エラ・メイをゲストシンガーに迎えている。世界のカップルが幸せそうに踊るドキュメンタリータッチの(というかホントにドキュメンタリー)作品だけど、歌詞と下に表示される説明がとっても重要なので、ちょいと解説しておこう。
「Put It All On Me」とは、何もかも私が引き受けるから、って意味。嫌なことがあって、早く家に帰りたいと男がこぼす。家には強くて優しい心を持つ彼女が待っていて、なぐさめてもらえる。彼女はこう言ってくれるんだ。ゆっくりダンスしましょう。私はあなたの望み通りになる。心配ごとは、すべて私が引き受けるから……。
ダメ男の妄想とも思える歌詞だけど、まあそれは置いておいて。相手が弱ったときは全身で支える、それが愛ってものだよ、と前向きに解釈しよう。
さて、ここに登場するカップルは、街で出会った普通の人たちで、その場所と、ちょっとした背景が画面の下の字幕で解説されている。その対訳を載せておこう。
・アルメニア
ポールとステラは11年来の友人同士
ついにポールは「愛してる」と告白した
彼女も「愛してる」と返した
・アメリカ北西部のラミ族
4000年続く愛のダンス
ジェームズとルネは子どものときに習った
2人がパートナーになって初めて踊った
・ザンジバル
新婚旅行中のオーストラリア人カップルに出会った
踊ってくれと頼んでみた
ステファニーとタイソンは結婚2週間目
・ザンジバル
ナッシールはラマダンが終わって踊っているカディジャと出会った
2人は2009年に結婚してスパイス畑を経営している
・ダラス
ファハドとアイシャの結婚式にお邪魔した
彼女はエドの大ファンだった
・グアテマラ
ダイアナとクリスティアンはアンティグアで育った
彼が彼女をダンスに誘った
・ドゥルマースハイム
ネリアとディートメルは結婚49年目
十代のころからずっと一緒
・ケルン
キャロリーヌとペーターは30年来のパートナー
2001年に同性婚が合法化されてすぐに結婚した
・マイアミ
フィリベルトとセリーナは今でも17歳であるかのように踊ってる
・ニューヨーク
P.J.とノアの結婚のダンスが拡散した
楽しい時間を過ごしている
・カリフォルニア
ジェニーとカメルは2017年に結婚した
しかしアメリカ移民局によって最初の1年間は引き離されていた
・タンザニア
エスターとデイビッドは結婚3年目
これは彼女が生まれた初めて踊ったダンス
・テキサス
カリーナとルーパーとはタルサバレエ団で出会った
彼女はベネズエラ人、彼はジャマイカ人
結婚8年目で小さな人間ができた
・サンディエゴ
赤ちゃんが蹴った!
キオネとマリー、妊娠7カ月
結婚7周年でのこと
・ロンドン
高校時代、エドとチェリーは激しい恋に落ちた
山の上のお城で結ばれた
数年前に再会して、また火が点いた
2019年1月に結婚した
この愛らしい歌声の主はエラ・メイ
最高の仕事をしてくれた
制作したのはアメリカはワシントン州出身のジェイソン・コーニグ監督。SONOSのブログに掲載されたインタビューで、面白い経歴を話している。高校時代に野球をやっていたが、肩を壊してからカメラでスポーツをする友人たちを撮影するようになり、本格的にカメラにはまっていった。後に、ガールフレンド(今の奥さん)の親友の弟の仕事を手伝って欲しいと頼まれた。点数を稼ぎたかった彼は、シアトルのヒップホップシーンを映像で記録したいという彼を手伝っていたが、弟はバンドを始めるからアルバムのジャケット写真を撮って欲しいと頼まれ、さらにMVの制作も依頼されるようになった。その弟ってのがライアン・ルイスで、MVはマックルモアー&ライアン・ルイスのアルバム「The Heist」の中の「Can’t Hold Us」。これが数々の賞を受賞して、注目されるようになった。
さて、エド・シーランの「Put It All On Me」は、コーニグ監督が世界を駆け回って撮影している。彼のインスタグラムには、こう書かれている。
「ジェニー・コーニグ、ハーナ・キメラー、ジョニー・バレンシアという大好きな3人と、バックパックにカメラを詰め込んで、世界中のダンスをする本物のカップルを探しながら16回飛行機に乗って、17のショットを18日間で撮影した。すべての文化を網羅できなかったが、できる限り多くを撮れるように頑張った。我々が出会った人たちは、本当に刺激的だった。愛は本物。ダンスは最高。この年末に、世界にちょっとだけ喜びを届けられたらと願って」(ジェニーはコーニグ監督の奥さん)