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踊る人たちが融合してゆく様は不気味だが美しい
ケミカル・ブラザーズ「Got To Keep On」のMV

金井哲夫 Mar 11 2019

ケミカル・ブラザーズの「Got To Keep On」の MV は、あの映像監督兄弟、ミシェル・ゴンドリーとオリビエ・ゴンドリーが監督を務めている。ケミカル・ブラザーズとのコラボは2001年「Star Guiter」以来。

dir
Michel Gondry, Olivie Gondry
prod co
Partizan
m
The Chemical Brothers
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ケミカル・ブラザーズの9作目にして、2015年以来のフルサイズのアルバム「No Geography」に収録されている「Got To Keep On」の MV は、あの映像監督兄弟、ミシェル・ゴンドリーとオリビエ・ゴンドリーが監督を務めている。

昔のディスコを思わせるサウンドに合わせて、これまた昔のディスコ調に列を作って踊る人たち。しかし、見ているうちに色とりどりの衣装を着けた彼らの体に変化が起きる。全身が真っ白になり、やがて2人が溶け合う。そして全員がクリームのように混ざり合ってしまう。

歌詞はずっと「Gotta keep on making me high」(続けなくちゃ、ハイになれるから)と繰り返す。踊る人たちの衣装が白くなり、体が融合し、妙なことになって彼ら自身も不思議な表情を見せるころ、単調なビートが遠のき、「そして雨が降ってくる。涙のように」と語りが入る。

再びビートが戻り、人々は元の姿に戻りかけるが、最後に一人の男性が、脱ぎかけた白いマスクをまた顔に被って終わる。

なんか象徴的な感じだ。ひとつのリズムに乗ってハイな気分を維持するためにガンガン進んできた人間が、どっかで調子が狂ってわけがわからなくなって、もうそこから抜け出せなくなった様子を描いているのか、それとも元の世界には戻りたくないという意志表示なのか。

監督のミシェル・ゴンドリーと弟のオリビエ・ゴンドリーは、それぞれ一流の映像監督ながら、兄弟で共同監督をすることが多い。ミシェルは自らが所属するバンドの MV を作ったことから映像の世界に入り、CM や、ビョーク、ローリングストーンズ、ポール・マッカートニーといった大物のVMを手がけてきた。2004年の「エターナル・サンシャイン」では長編映画の監督としても高く評価された。

オリビエは、もともと視覚効果アーティストで、兄のサポートをしていたのだが、やがて映像監督としての活動を広げていった。そのため、高度な技術を駆使した作品を得意とする。

ゴンドリー兄弟が監督したMVとしては、2010年のカイリー・ミノーグの「Come Into My World」が代表作と言われているが、ケミカル・ブラザーズとのコラボは、2001年に「Star Guiter」のMVを制作して以来。今回は視覚効果のかたまりのような作品だ。何をどうやって作っているのか、すごく気になるのだけど詳細はわからない。オリビエに確認したところでは、残念ながらメイキング動画は作っていないそうだ。クレジットには、ポストプロダクションにオリビエ・ゴンドリーの名前があるので、やっぱりオリビエの技なのだろう。

雑誌編集者を経て、フリーランスで翻訳、執筆を行う。

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