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湯に浸かる気持ちよさそのもののMV
EVISBEATS「NEW YOKU feat. CHAN-MIKA」の極楽

gabin gabin Aug 17 2018

EVISBEATSの「NEW YOKU feat. CHAN-MIKA」の MV は、アニメーション制作ユニット「最後の手段」による1年がかりのゆる〜い大作。妖怪、モノノケ、魑魅魍魎、おじさん、おねえさん、こども、あらゆるものが湯につかってリラックスしてる、映像と音楽に導かれる入浴体験だ。

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saigo no shudan
ani
Ayumu Arisaka,Ren Kobata
color grading
Oitama
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EVISBEATS
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今年5月に発売された、EVISBEATS 6年ぶりのアルバム「ムスヒ」の中の一曲「NEW YOKU feat. CHAN-MIKA」の MV だ。

MV の話の前に、このアルバム「ムスヒ」のことだけど、これ個人的に急所にヒットした感じで、この夏たいへん楽しませていただいております。ゲストの面々は、LIBRO、鎮座DOPENESS、田我流、CHAN-MIKA、Phoka、前田和彦、MICHEL☆PUNCH、伊瀬峯幸、と。これまた個人的に痒い所がボリボリ掻けるラインナップ。

EVISBEATS が説明される時、必ず枕に、奈良出身、和歌山在住のトラックメイカーという文言がつくけれど、確かにその枕を使いたくなる。今回のアルバムタイトル「ムスヒ」は「産霊(むすひ)」から来ていて、すなわち「生命のあるものを生み出し作り出す行為」を意味する、というね。日本に固有の、土着の、野生の、豊穣を体現している人なんだなと思う。

そしてこのMVですよ。作ったのはアニメーション制作ユニットの最後の手段。見ておわかりの通り、ここで描かれているのはニッポンの「湯」の文化の豊かさで、妖怪とも八百万の神ともとれるわけわからん勢がたくさん登場していて楽しい楽しいずっと見ていられる。ニッポンの「美しい国」はこういう部分に凝縮されているのではないだろうか。

ゆるくてリラックスして見ていられるこの映像。しかし作るとなったら、めちゃくちゃタイヘンなのでは? ということで最後の手段に質問してみた。

──このMV、映像系の海外サイトでめちゃくちゃ紹介されまくってますね。世界中からフィードバックがあるのではないですか?

はい。温泉や大浴場、お風呂に入る習慣のない文化圏の人達が観ても、単純に「面白い」と思える作品になるように心掛けて制作しましたので、とてもありがたいです。

──このビデオを依頼された経緯を教えてもらえますか。

EVISBEATS さんが以前、我々の制作した MV 等を観てくださっていたんです。その中で、でんぱ組.incさんの全国ツアー用OPアニメーション(GO! GO! DEMPA TOUR 2016 )とNHK Eテレ「シャキーン!」内のクイズコーナーで流れていた「修行クイズ」を特に気に入ってくださって、MV 制作の依頼をしてくださいました。

──中身についてEVISBEATSさんから指定はあったのでしょうか。

まず最初にEVISBEATSさんから「いろんな妖怪や生き物がお風呂に入っている」「NYの街に銭湯がある」といった イメージをいただいて、それを元に絵コンテを描いていった感じです。具体的な内容やストーリーは制作が進行するごとに変更していきました。

──ちなみに制作期間はどれくらいですか? こうしたものすごく時間がかかる映像が、楽曲のリリースタイミングで発表されるのは難しいことだなと思って。

2017年4月26日にEVISBEATSさんからメールがきまして、そこから徐々にコンテ考えながら、本格的に制作を始めたのは10月からで、2018年5月に完成、という流れです。

──1年がかり!! 最初から決まってたわけじゃなくて、作りながら考えていった感じだったんでしょうか?

そうですね。1シーン出来上がるとその映像を見ているうちに、キャラクターの思いがけない動きなどを発見して、次のストーリー展開や新しい発想が生まれるので、その都度コンテ内容を修正し、最終的に完成したものは最初のコンテとは大幅に変わったものになりました。

──なぜこの内容と手法になったのでしょう。

NEW YOKU を聴かせてもらった際、素直に「様々な生き物や異なる文化の人々が、同じ場所を共有してリフレッシュする温泉」を描きたいと思ったんです。そうすることで EVISBEATS さんの曲や歌詞の「ALL OK」という全てを許容するような世界観を表現できるのではないかと。

──それこそ銭湯と楽曲のよさの重なり合うところだと思いました。

あと、銭湯や温泉のビジュアルの面白さだけじゃなくて、お湯の持つ回復力や地球の底から湧き上がってくる温泉の生命力も表現したかったんです。温泉には、人間や動物だけじゃなくて、異世界の住人や多次元の生き物も集まってくるような、宇宙共通の根源的なパワーがあると思うんですよ。

──いろんなタッチで多種多様な生き物やモノノケが集まってくる感じパワフルでした。ところで、このMVで、特にここに注目! ってところを教えていただいていいですか?

全て見て欲しいポイントなんですけど、水しぶき、雫の跳ね方、もやの出方、湯気の消え方は特に気をつけて制作したところです。それと、お湯の持つ生命力、湯に浸かって生き生きとする印象をつけたかったので、映像自体が生き物みたいになるべく画面のいろんな場所が動くように意識しました。その結果、画面内が常に何かが動いて揺れているような状態に仕上がっているかと思います。

──むちゃくちゃ動いてますよね。何度見ても発見があって、見飽きません。一方でこれを作り上げるには相当苦労されたのでは?

精神的な温泉を求めて作っていたのですが、制作中は修行をしている気分でした。楽しい→苦しい→嬉しい→辛いの繰り返しで、まるで苦行みたいで。ですけどやっと完成した映像を EVISBEATS さんに送ってお褒めの言葉をいただいた時は、成仏したような幸福感でした。

──修行からの成仏ヤバイですね。技術面での苦労はどうでしょう?

「紙に描く→色ぬり→切り抜き→撮影台に乗せて少しずつ動かしながら撮影」をひたすら繰り返してました。この手法は地道な作業で時間もかかるんですけど、撮影している時の脳の働きが、PCで作っている時よりも立体的に動いている感じがして、とても楽しいです。技術面はまだまだなので、もっと自分のアイディアを視覚化できるようになりたいんですけど。

──いやいや……最後の手段の作品は、独自の道を、すごい勢いで駆け上って洗練されてきてる感じがします。ところで制作期間も長かったと思うのですが、この制作期間中プライベートはどんな感じだったのでしょう?

息詰まった時や疲労の限界が来た時は、近くの銭湯へ行って無心になってましたね。お風呂に入った時のような解放感で制作ができればいいんですけど、真逆の心身の状態で制作していたので、銭湯に行ってその気持ちを忘れないようにしていました。

──真逆! 見てる側としては素でエンジョイしてしまいましたけど。ところで、この修業の制作を経て、今後の野望や展望はありますか?

温泉街で旅館に泊まりながらしばらく作品制作してみたいです。制作に疲れたら散歩したり足湯したり温泉に入って、元気になってまた制作する、という生活が出来たら良いなぁと思います。

──理想の制作っすね。ホントにそうなりますように……。

写真はいずれも、最後の手段提供のメイキング画像

「NEW YOKU feat. CHAN-MIKA」スタッフクレジット

音楽:EVISBEATS
アニメーション制作 / 撮影 / コンテ:有坂 亜由夢
アニメーション制作補助 / 編集 / コンテ:木幡 連
色彩調整:おいたま


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NEWREELの編集者。だいたい家にいる。インデペンデントな作りの映像と、映像の周辺に起こっていることに特に惹きつけられてます。