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ジャック・ホワイト「コーポレーション」のMVは
7分20秒の奇怪なミステリードラマ

金井哲夫 Jul 26 2018

ひとりの男の死を巡って警官の取り調べを受ける4人の容疑者たち。本作のタイトル「コーポレーション」と彼らにどんな繋がりが? と思う人もいるだろうが、ラストシーンまで見るとその意味合いがわかる仕組みとなっている。

dir
Jodeb
prod
Jason Baum
m
Jack White
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ジャック・ホワイトが今年3月にリリースしたアルバム「ボーディング・ハウス・リーチ」に収録されている「コーポレーション」のMVだ。

「一緒にやらないか? 会社ってのをやろうかと思う。今はそれがウケるらしい。トップを狙うんだ。でかい金をつぎ込む。車を買い占めて軍隊を作る。駐車場を買い占めて畑を作る。わかるか?……」という歌詞に載せて展開されるのは、どうにもワケのわからないミステリードラマだ。

舞台はアメリカの田舎町に建つ大きな屋敷。そこで主人(ジャック・ホワイト)が殺された。現場を見に来た警官は、そこで何かを思う。

警官は容疑者を呼び出して取り調べを行う。容疑者には、連続殺人鬼の女性、9歳の男の子、ダンサー、口紅を塗るのが好きなカウボーイ風のおじさんなど。いちばん疑わしい殺人魔の女性は「やってない」と言う。

やがて彼らは取り調べ室で楽しく踊り出す。殺人魔の女性は「わかる?」と警官に聞く。

最後に警官が屋敷を訪れると、そこには容疑者全員と、殺されたはずの主人が待っている。「大丈夫だ」とみなが言う。主人が「祈ろう」と言うと、みなが手をつないで目を閉じる。

エンドタイトルには、「ひとつの存在として活動することを認められた人の集まり」とコーポレーション(会社、法人)の言葉の意味が示される。

わかったようで、わからないようで。もしかして、犯罪者やハッピーな人や、いろんな人たちで構成されるアメリカ社会全体を表しているのか? なんとも断言はできない。

監督は、フランス生まれのジョデブことジョナサン・デスビエンズ。多くのMVを制作しているが、たとえば2015年に ZEDD のために制作した「Beautiful Now」の MV のように、美しい自然の風景と人間の生死を描いたものが目立つ。

実際、彼は、Video Static の2013年のインタビューにこう答えている。「山と森に囲まれた小さな村で育ったので、人生が常に自然とともにある。そこで絵を学び、リアルだけど自分だけの世界を描けると感じた。人工的な世界は面白くない。VFX は大好きだけど、オーガニックで自然なものを求めたい」

コーポレーションに関してジョデブ監督は、「こうしたアイデアを撮らせてくれる勇気あるアーティストはひとりしかいなかった。それがジャック・ホワイトだよ」と話している。


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雑誌編集者を経て、フリーランスで翻訳、執筆を行う。

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