The Peach Kings の6月に発売されたシングル「Dirty Secret」の MV が、歌詞の内容をそのまんま素直に表現しているようで、勘違いしているようで、なんとも笑える。
The Peach Kings はロサンゼルスを拠点に活躍する男女のデュオ。Dirty Secret は、読んだとおりの「汚れた秘密」という意味で、歌詞の内容は「どうしてバレたのかしら。大人しくしてたのに。誰にも言わないで。裏切らないで。私の汚れた秘密。あなたは私の汚れた秘密……」というもの。
これをポール・トリロ監督は、それをそのまま、中年男性と汚れたモップとの秘密の恋というストーリーで描いた。そのまんま過ぎるだろ! と感じる人も多いだろう。もっと大人の、あれやこれやの深い意味があるんじゃないの? みたいな。しかし、The Peach Kings は自らのサイトのブログで、この MV を「誤解された男とその愛を描いた胸が締めつけられる物語」と紹介している。つまり、内容に納得してるということで、この表現は正解だったわけだ。
トリロ監督は、ニューヨークを中心に活動する映画監督で、テレビ CM、MV 、ショートフィルムを数多く制作している。とくにテクノロジーに関心高く、スマホを何台も使った持ち運びができるバレットタイム用の器具を自作したりもしている。また、2011年に発表した Teebs の「Moments」の MV では、実験的な手法を使い、美しい映像表現を行っている。かなりの低予算作品ながら、煙によって永遠に変化する感じを出すために200個の煙幕弾を使ったという。
トリロ監督のもうひとつの関心は「コメディー」にある。その作品には、美しい視覚効果の他に、笑いの要素も強い。「Dirty Secret」では、店の掃除係がモップに恋をするというだけで笑えるのだが、マネージャーに見つかって小言を言われたとき、「誰にも言わないで」という歌詞と掃除係の口を同期させるあたり(1分52秒ぐらいから)、映像が歌の側にかなり出しゃばってる。ここが最大に笑える部分でもあるが、「ここまでやっていいの?」と心配にもなる。まあ、The Peach Kings の2人は喜んでいるようだから、よかった。