BERLIN KIDZ はドイツのベルリンで活動するグラフィティーおよびパルクール集団。ただ壁にタグを描くだけの連中とは、やってるこのスケールの大きさというか、馬鹿さ加減というか、レベルが違う。
じつは彼らは、一部で大変な人気者で、4年ぶりに発売したという2枚目の DVD 「Fuck the System」のコレクター・エディションは28ページの写真集付きという内容で、1カ月で完売。追加生産されている。お値段は29.99ユーロ。
ドイツの新聞 TAZ 電子版には、BERLIN KIDZ の主要メンバーであるパラドックス氏とイカロス氏のインタビューが掲載されているが、それによると、彼らの目的は、今の社会システムや日常に変化をもたらすことだという。ベルリンにも多くのグラフィティー集団があり、地上は彼らのタグで埋め尽くされているので、BERLIN KIDZ は、とにかく誰も行かないような高いところに登り、大きなメッセージを書くのだという。彼らのグラフィティーのスタイルは、ブラジルで生まれた Pichação(ピシャソ)というものだが、彼らはそれを青や赤を使ってカラフルにアレンジしている。
グラフィティーと聞けば、悪い子のいたずらと連想しがちだが、彼らは真剣なアートとして取り組んでいる。走っている電車の屋根に乗る(トレインサーフィンと呼ぶそうだ)のも、彼らにはグラフィティー、つまりアートなのだそうだ。パラドックス氏は、「自分たちはアドレナリン・ジャンキーだとよく言うが、だからドラッグがいらないんだ。アートを愛し、ドラッグを嫌う。それが我々のモットーだよ」と話している。
イカロス氏は、「すごく慎重に真剣にやってる。酒やドラッグの勢いで真似をして欲しくはない。我々は、頭がとってもクリアな状態で、きちんと物事を理解してやってるから」と言う。
高いところからぶら下がってスプレー缶を使うときも、本式の登山用具を使っているし、街の中心地にでかでかと書くのは「現代の奴隷制」など、社会的なメッセージ。ある意味、「まっとう」なことを言っている。
だがやっぱり、こうした活動は一般に受け入れられるものではない。この動画の冒頭には、「訓練を積んだプロによるスタントなので、真似をしないように。ここに映っている電車の路線はもう変わっているので、やると死にます」と警告文が出る。さらに、LiveLeak に掲載されたこの動画は、第三者の目線も加わっていてとても面白いが、電車の運転手だか車掌だかに「お前らバカか!」と怒鳴られている。大らかな対応に見えるが、迷惑であることに変わりない。
グラフィティーは明らかに迷惑行為であり、器物損壊罪にも該当する犯罪だ。電車の屋根に乗るのは自殺行為であり、日本では鉄道営業法に触れる。それより、街の落書きを消す活動をしている人や鉄道会社で安全に神経をすり減らしている人からすれば、「けしからん」を通り越して、悲しい行為かもしれない。
こうした活動も、いつかはアートとして世間に認められるようになるときが来るのかも知れない。来ないのかも知れない。ちょこっと気にしておこう。