ノルウェー出身で現在ロンドンで活動している映画監督ビヨン・ブラットバルグ氏が2016年に制作したスキージャンパー葛西紀明のショート・ドキュメンタリー。2017年第12回札幌国際短編映画祭で最優秀撮影賞を受賞しているが、このほど Vimeo のスタッフピックスに選ばれて、再び話題になっている。
撮影には Super16mm と Super8mm カメラが使用されている。HD も使われているとのことだが、全体にフィルムの柔らかい感じがある。
ブルガリアで開かれる In the Palace 国際映画祭のブログのインタビューで、なぜフィルムを使ったのか、なぜ葛西紀明を題材に選んだのかなどについて、ブラッドバルグ氏が答えている。
ノルウェーで生まれ、自身もスキージャンプをしていたブラッドバルグ監督にとって、葛西はまさに「レジェンド」であり、スキージャンプの人気が高いノルウェーで、自分たちの世界からではなく、遠い日本からやって来た葛西に興味を持ったそうだ。
シネマトグラファーであり、映画やテレビドラマや CM の監督でもあるブラッドバルグ監督は、「同じようなインタビューで構成される同じようなパターンに陥りがなショート・ドキュメンタリー」にはしたくなかったのだという。富や名声を持つ人ではなく、何かひとつのことに全力を傾けている人、とりわけスポーツ選手に焦点を当てたかった。しかし、「勝利という平凡な題材」ではなく「スポーツへの愛」を描きたかったのだという。
ブラッドバルグ監督は、郷愁や思い出を呼び起こす、ビデオとは違う「バイブ」と独特の質感を持つアナログでの撮影を、非常に大切に思っている。
この動画は、「瞬間の出来事」「行動の意味」「会話」の3つの異なる表現で構成されていて、それが葛西の「大志と夢」であり、葛西が「Why」と「How」を語る中にある「ノスタルジアの瞬間」だと監督は語っている。
控えめながら、ところどころエフェクトが見られるが、ポストプロダクションは「キングズマン」などを手がけたロンドンの Goldcrest が担当している。