マーベルコミック原作のスーパーヒーロー映画「ブラックパンサー」が日本でも本日、3月1日と公開となるが、2月16日に公開されたアメリカでは大変な評判で、公開から3日間の興行成績は、ボックス・オフィス・モジョの調べでは約216億円と歴代5位。アフリカ系俳優(「ジェームス・ブラウン〜最高の魂を持つ男〜」でジェームス・ブラウンを演じたチャドウィック・ボーズマン)が主役を務める映画として、またアフリカ系監督(「クリード チャンプを継ぐ男」の監督ライアン・クーグラー氏)の作品としても、これまでの記録を抜いている。
そんな超話題作のサウンドトラックをプロデュースしたのが、クーグラー監督の熱望によって起用されたラッパーで映像作家でもあるケンドリック・ラマー。「ハンブル」で2017年 MTV のビデオ・ミュージック・アワードでベスト・ヒップポップ賞、ビデオ・オブ・ザ・イヤー賞など5つの賞を受賞しているが、この5年間で獲得した賞のトロフィーの数は約80個、オバマ大統領がラマーの大ファンということでホワイトハウスにも招かれ、さらにはタイム誌の「世界で最も影響力のある100人」やフォーブス誌の「影響力を持つ30歳以下の重要人物30名」にも選出された。また、昨年発売されたアルバム「ダム」のSpotifyとApple Musicでの再生回数はトータルで34.1億回などなど、数を上げればキリがないほどの功績の持ち主だ。
出身はロサンゼルス南部のコンプトン。アメリカでもっとも犯罪率の高い街のひとつで、ギャング抗争が絶えない地区だ。父もストリート・ギャングのメンバーだったが、「まっとう」に音楽の道を歩み大スターとなった。
映画のサウンドトラックを作曲したのはルドウィグ・ゴランソンで、彼の曲を集めたアルバムも出ているのだが、なんとそれとは別に、劇中で使われている3曲と、この映画に刺激されて作られた9曲を集めた、ケンドリック・ラマーのプロデュースによる「ブラックパンサー・ザ・アルバム」が同時に制作された。ここに紹介した映像は、そこからシングルカットされた「King’s Dead」(王は死んだ)の MV だ。
この曲には、ケンドリック・ラマーの他、フューチャー、ジェイ・ロック、ジェームズ・ブレイクといった4人のアーティストが参加しており、ちょっと面白い二部構成になっている。歌詞の意味はバリバリの黒人英語で実のところよくわからないのだけど、悪いことしてたくさんお金を儲けても空しい、ってところかな。
MV の監督は、ケンドリック・ラマーと16歳のころから一緒に MV 制作活動をしてきた親友のデイブ・フリー氏。ケンドリック・ラマーがミュージシャンとしての才能を発揮するようになると、2人はレコードレーベル「Top Dawg Entertainment」(TDE)を設立してヒップホップ業界を牽引するようになったのだが、同時に、MV 作りにも力を入れていた。そしてある日、MV のためのブランドを作ろうと、TDE 傘下に「The Little Homies」を立ち上げた。ちなみに、Top Dawg とは親友、Homies は同郷の友人という意味。
The Little Homies に関する情報は少なく、2015年の MTV NEWS のインタビューでは、TDE の仕事がたくさんある中での趣味の部分なので、静かにやっているとフリーは話している。
ケンドリックとフリーは、1992年から1997年にかけて FOX で放映されていたシチュエーションコメディー「マーティン」が大好きで、大きな影響を受けたという。「マーティン」は観客を入れたライブ形式のドラマで、とくに小さなステージの限られた空間の中に、たくさんの要素をクリエイティブに詰め込んでいたところが勉強になったそうだ。
「制作クオリティーの面では、白人が作るドラマに比べたら最高とは言えない。でも限られた資源で彼らは頑張っていた。我々が求めているのもそこだ。最高にドープなコンセプトを作るのに大金はいらない」とフリー。
このインタビューの時点で、今後は TDE のアーティストたちと MV や映画をどんどん作っていくから楽しみにしていてくれとフリーは話していたが、今、その結果が次々に現れてきている。
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