マイアミに住む映像作家オリバー・クマイヤは、ローマに旅行した際に、トレビの泉へ行って写真を撮ろうとしたのだが、そこは観光客で埋め尽くされ、絶好の写真撮影スポットには行列が出来ていた。
彼はその光景にうんざりして、大勢の人間が同じ観光地に詰めかけてわらわら歩くマスツーリズムに疑問を持った。そして、多くの観光客が、その場を楽しむよりも、スマホで写真を撮ってSNSに上げるほうに夢中になっている姿を見て、彼らの旅の目的は、SNS で「いいね」をもらうことなのだろうかと呆れてしまった。
そこで、Hiérophante の Clichés という曲の MV を思い出した。「クリシェ」とは決まり文句という意味だが、それが転じて型にはまったつまらない芸術作品のことも指す。Hiérophante のような滑稽な動画を自分も作ろう、そこにマスツーリズムと Instagram に対する痛烈な皮肉を込めてやろうと彼は考えたのだ。
彼は数ヶ月間、Instagram を検索して、一般公開されている記念写真をかき集め、被写体が同ポジになるように手作業で合わせながら、面白い展開になるよう繋げていった。そしてこの動画に、Instravel(InstagramとTravelをかけている)と名付けた。
それにしても、みんな同じ場所で同じポーズで記念写真を撮っているのだね。たしかに、観光地に行くと、撮影に適した場所ではスマホを持ったグループが並んでるのをよく見かける。どこへ行ってもディズニーランドのミッキーさん待ち状態だ。
ちなみに、誰もが撮影する場所を避けたいという人のためのiPhone用のカメラ型ケースを開発した人がいる。GPSを使って、そこで何人の人が撮影しているかを知らせてくれるというものだ。みんなと同じことが嫌いで、電子工作が好きな方はどうぞ。