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不思議なほど同じだったりするマスツーリズムの記念写真事情

金井哲夫 Feb 15 2018

人気の観光スポットでは観光客たちがお決まりの構図で写真を撮ってそれをSNSへあげる。そんな「いいね」欲しさの無個性写真に対し、ある映像作家が皮肉たっぷりの映像「Instravel」を作った。

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Oliver Kmia
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マイアミに住む映像作家オリバー・クマイヤは、ローマに旅行した際に、トレビの泉へ行って写真を撮ろうとしたのだが、そこは観光客で埋め尽くされ、絶好の写真撮影スポットには行列が出来ていた。

彼はその光景にうんざりして、大勢の人間が同じ観光地に詰めかけてわらわら歩くマスツーリズムに疑問を持った。そして、多くの観光客が、その場を楽しむよりも、スマホで写真を撮ってSNSに上げるほうに夢中になっている姿を見て、彼らの旅の目的は、SNS で「いいね」をもらうことなのだろうかと呆れてしまった。

そこで、Hiérophante の Clichés という曲の MV を思い出した。「クリシェ」とは決まり文句という意味だが、それが転じて型にはまったつまらない芸術作品のことも指す。Hiérophante のような滑稽な動画を自分も作ろう、そこにマスツーリズムと Instagram に対する痛烈な皮肉を込めてやろうと彼は考えたのだ。

彼は数ヶ月間、Instagram を検索して、一般公開されている記念写真をかき集め、被写体が同ポジになるように手作業で合わせながら、面白い展開になるよう繋げていった。そしてこの動画に、Instravel(InstagramとTravelをかけている)と名付けた。

それにしても、みんな同じ場所で同じポーズで記念写真を撮っているのだね。たしかに、観光地に行くと、撮影に適した場所ではスマホを持ったグループが並んでるのをよく見かける。どこへ行ってもディズニーランドのミッキーさん待ち状態だ。

ちなみに、誰もが撮影する場所を避けたいという人のためのiPhone用のカメラ型ケースを開発した人がいる。GPSを使って、そこで何人の人が撮影しているかを知らせてくれるというものだ。みんなと同じことが嫌いで、電子工作が好きな方はどうぞ。

雑誌編集者を経て、フリーランスで翻訳、執筆を行う。

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