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撮影現場に来ないアーティストに監督がマジギレして制作した愚痴満載の爆笑 MV

金井哲夫 金井哲夫 Dec 22 2017

Young ThugのMV撮影当日、Thug本人がなかなか現れない。そこで監督はThug抜きで撮影を進めることにしたのだが……

dir
Young Thug, Ryan Staak
pro
Pomp&Clout
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映像監督のRyan Staakは、ラッパーのYoung Thugに依頼されて「Wyclef Jean」のMVを制作することになったのだが、撮影現場にYoung Thugがなかなか現れない。そこで監督のStaakは、Thug抜きで撮影を進めることにした。

いくら待ってもThugは来ないので、当初の予定とはまったく違う映像を、その場で「でっち上げる」形で撮影を進めた。

その間、あれやこれやの問題が続発して、Staakはキレてしまった。そうして出来上がったのが、この監督の愚痴で構成された「いい加減」な映像だ。これがなんとも面白い。

ともかく、Staakが何を言っているのかわからなければ意味がないので、動画の中に表示される文章の対訳を見て、動画を味わってほしい。黒バックで白い文字で示されるのがStaakの言葉。Thugやその他の人たちの言葉は黄色などの色つきの文字で示されている。

やあ、私はRyan Staak。この動画のYoung Thugとの「共同監督」だ。

でも彼とは一度も会ってない。

最初に動画のアイデアを語った彼の音声が届いた。

Thug「山の上で撮影する。マニーは外車を山ほど使おうと言ったが、オレは外車を使わずに、子ども用の車を使う」

誰か「ゴーカートとか?」

Thug「いや、小さい子どもが乗って運転するやつだ」

誰か「電動の車ね?」

Thug「それから20人の女だ。ビッチどもだ。大勢の娼婦だ。その中にオレが混じる」

Young Thugは撮影開始時間には現れなかった。

というか、彼は一度も来なかった。

だが2カ月後に彼は自分で撮影した動画を送ってきた。

チートスを食べるというのが私のアイデアならよかったのだが、彼が勝手にやったことだ。

最高の時間だったよ。

私の構想とは似ても似つかないものだ。

そこで、この動画がメチャクチャになった理由を説明しよう。

ここではThugが車を運転するはずだった。

でも本人が来ないから、女の子と別録りした映像を入れ込んだ。

Thug「パトカーを出したいな。子どもが運転してるんだ」

誰か「ファクストラポジション?」(ポルノに著名人の映像をはめ込む手法)

Thug「そうさ」

誰か「水鉄砲にできます?」

Thug「ああ」

Thug「メチャクチャにしたい。壊すんだ。女たちにもやらせろ。女にはバットを持たせろ」

このシーンはうまくいった。

本物みたいだ。

木のバットがこんなに曲がるなんて、知ってた?

ウソだよ。あれはゴムのバットだ。

窓ガラスが割れたとき、現場にいた本物の警官に止められた。

だけど、編集のマジックで、どんどん盛り上がるように見えている。

Thugはこのガキをミシシッピから送り込んできた。

車を壊すところを見ている本物の警官。

覚えておいてほしい。彼らはまた戻ってくる。

レーベルの人間から、Thugが数分内に到着するから準備しろと連絡があった。

Thug「小さい車に乗って、パーティーを開く。家の庭だ」

彼女を赤い水着に着替えさせろと言ってきた。

後処理で行うと私は伝えた。

これが最初の構想だ。

「子どもに悪影響がある」とのことで変更を命じられた。

良い子のみなさん、聞いてね。
♪ お前の顔に乗っけなければ、オレは眠れない。

Thugはまだ現れない。だからでっち上げることにした。

弁護士から、男が「ケツからケツへ」と言っているシーンを削れと命令してきた。

批評家はなんのことか察するだろうけど。

ちなみに、この場面では彼女たちに特別料金を払ってる。

代理人は裏方を送り込んでいた。これが彼らの映像だ。

(レーベルの人間がクルーに怒鳴る.mp4 メディアが見つかりません)

10時間後に彼は到着する予定だった。Young Thugが近くまで来ていると言われた。

車のシーンを撮影する時間はたっぷりあった。

ここに彼が乗る予定だった。

ようやくYoung Thugがやって来た!

だがプロデューサーがやって来て、Thugが車から降りようとしないと私に告げた。

到着と同時に、彼のインスタのアカウントがハックされたそうだ。

しかも彼のボディーガードが警官と揉めて、「撮影を止めろ」と脅してきた。

レーベルの代理人とマネージャーが車から降りるよう彼を説得する間、私たちは待った。

そして突然、Thugが走り去ったと聞かされた。

皮肉なことに、私の最初のアイデアでは、Young Thugが金を燃やすことになっていた。

帰る道すがら、Young Thugはこの動画を気に入ってくれるか心配になった。

でも、今となってはどうでもいい。

これがこの話の教訓。「どうでもいい」

この動画には10万ドル以上かけたにも関わらず、本人は来なかった。

でもみんな見てるよね……

……歌が終わってるのに。

だから、この動画は成功したと思う。

おしまい。

あ、ロゴを忘れてた。

300 (これをなんとか許してくれたところ)

YSL (いつも締め切り守ります)

Pomp&Clout (この動画を制作したところ)

これはヤラセでもなんでもない。本当の話だ。音楽まとめサイト Pegions&Planes が行ったStaakへのインタビューで、Staakはこうぶちまけている。

「個人的には、あの状況に本当に腹を立ててムカついてた。3人のチームを引き連れてニューヨークから飛んできて、あいつのアイデアをもとに最高の作品を撮ろうとしていたのに、あいつは車から降りることもしない。本当にイラついた」

Staakはニューヨークに帰ってから、撮り直しや、Young Thugの映像を後から入れ込むことなどを考えたが、すでに撮影した素材にはいいものもあり、ひどいものもあった。だからこれを使って、この「ホラー・ストーリー」の真実を語ることに決めたのだ。

女性の水着を「後処理」で赤くすると話した後の、あの超雑な処理は、Staakの見事な「映像的愚痴」と言える。よっぽど怒っていたのだろう。

だがStaakによれば、このクリエイティブな動画の基本はYoung Thugの最初のお馬鹿なアイデアであったと話している。また、「最高にクリエイティブな種を与えてくれたのは、彼自身が現れなかったこと」だとも皮肉交じりに言っている。

ちなみに、歌の内容は「オレの金をじゃんじゃん使って、高級車を乗り回して遊びやがれ」みたいな感じ。だが、こうなるともう歌詞なんてどうでもいい雰囲気だ。

Young Thugが本当にこの MV を気に入ってくれたのかどうかは、彼から直接聞いていないのでわからないとStaakは心配していた。しかし、Young ThugはInstagramで 子ども用の車に乗った写真 を公開し、「あの撮影のときに乗れなかったから」とコメントしているところを見れば、どうやら気に入っているようだ。

ともかく、「オフィシャル」MV として公開されているのだし、Young Thugもかなり洒落のわかる男に違いない。

金井哲夫

雑誌編集者を経て、フリーランスで翻訳、執筆を行う。