本展は、パリにあるルイ・ヴィトン財団の美術館「フォンダシオン ルイ・ヴィトン」が所蔵するコレクションの中から、主に未公開の作品を世界中のエスパスで紹介をする「Hours-Les-Murs(壁を越えて)」プロジェクトの一環となっている。今回、表参道のエスパスでは、中国のアーティスト、ヤン・フードン(Yang Fudong)による5チャンネル・ビデオ・インスタレーション「The Coloured Sky: New Women II」(2014)を公開している。
ヤン・フードンは、画家としての教育を受けつつも、近年ではビデオ、映画、インスタレーション、写真など、絵画とは違った表現方法で作品群を発表してきた。中国の伝統を重んじながらも新しさを感じさせる映像美は、劇的な存在体験をもたらすとされ、中国を代表する現代カラーフィルムアーティストとしての地位を確立した人物だ。
フードンの映像作品は、沈黙の中で振り付けのように決められた身振りを行う現実味を欠いた登場人物たちがマルチスクリーンに映し出され、観る者を完璧なる美の世界へと引き込むのが特徴だ。
これまで35mmのモノクロの映像作品を基本としていたフードンだが、本作は圧倒されるほどの鮮烈な色使いで展開される、初のカラー映像作品というところは注目すべき点のひとつであろう。
5つのスクリーンに広がる浜辺のセットは、鮮やかな色彩とともに人工的な趣を漂わせており、そこへひと昔前の水着を身につけた若く麗しい女性たちが登場する。
各スクリーンには、太陽、海、浜辺、遊び、食べ物、西洋美術についてのメッセージが込められ、そこには女性たちとは別に生きた馬と剥製の雄鹿が映し出される。これは「何が真で何が偽であるか」を諭す中国の故事「鹿を指して馬となす」の引用とされ、中国と西洋の伝統や文化を様式的に取り込むフードンの典型的作風が堪能できる個展だ。