映像作家・映画監督であり、ダンサー、コレオグラファーでもある吉開菜央の初個展が開催中だ。
吉開菜央は、ご存知の方も多いと思うが、日本女子体育大学舞踊学専攻でダンスを学んだあと、東京芸術大学大学院映像研究科へと進み、その身体的な感覚を武器に映像を制作してきた異色の映像作家だ。
ミュージックビデオの制作などの他、2015年には「ほったまるびより」を監督。これが文化庁メディア芸術祭エンターテイメント部門新人賞となった。体験としての上映形式にもこだわり、「自家製4DX」と名付けた臨場感あふれる上映を行ったりしてきた。それを考えると映像作家でありながら今回のように「個展」という形式を選ぶことも、当然に帰結のように感じられる。
初個展のテーマは「呼吸」。上映作品は「ほったまるびより」や、初披露となる新作「静坐社」など、全4作品(約60分)がオムニバス形式で上映されている。
今回新作として披露される「静坐社」は、明治時代に岡田虎二郎によって考案された「岡田式静坐法」を世に広めるべく活動を行っていた家が2016年3月に取り壊されることになり、その様子を吉開が撮影・記録した作品だ。
吉開は本作を通して自身の過去作品を振り返り、「“お腹”と“呼吸”というモチーフが繰り返し出てきたことに気づきました。それは体力がありそうに、健康そうにみえて実は割と打たれ弱い自分の身体を、作品制作を通じて鼓舞してきたような、生まれ持ったこの身体でもってこの世に折り合いをつけるために、撮影し、編集し。からだにまつわる物語を生み出すことで発見したことが作品になっているのからなのかもしれません。」と語っている。
なお、本展においては吉開菜央がインスタレーションに挑戦し、映像ともに、ギャラリー内を「呼吸する部屋」として体感できる空間を作り上げている。