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Feature

山田健人インタビュー前編。思想を伝える映像制作。
ミュージシャンの100%を120%に僕がする

kana kana Oct 31 2017

ガラケーのゲームを作るプログラミング中学生。ハンダゴテでアンプを自作する電子工作高校生。モーショングラフィックスで映像を作りはじめた高校3年生。と思いきや、大学では一転してアメフト部でスポ根の日々を送る。大学2年次にU19日本代表チームに参加し、W杯世界3位。そして現在は、バンド「yahyel」のメンバーとしても活躍する映像作家、「dutch_tokyo」こと山田健人。東京のインディーズ音楽シーンから圧倒的な信頼を寄せられ、宇多田ヒカルや、米津玄師+菅田将暉など、メジャーアーティストのMVも手がける注目の山田健人にインタビューした。

取材写真
rakutaro
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山田健人、学生時代を語る

ー初めて映像制作に触れたのは、高校3年生の頃だそうですね。

それまで作ったことはなかったんですが、友達に頼まれて。できないって言いたくなくて、イベント用の映像で当時流行っていた文字がシャーッって動くやつを制作しました。

ーモーショングラフィックスですね。現在25歳ということですが、その当時のモーショングラフィックスと言えば、細金卓矢さん、な時代でしたか?

細金さんはもうレジェンドでしたし、僕のは子どものお遊びみたいなものでした。その頃はお金もなくて、カメラもなくて、パソコン一台で、それがまためちゃくちゃ遅いんですけど、がんばって作る、みたいな感じでした。

ー中学生の頃からプログラミングでゲームを、そして電子工作でアンプ作りをと、理系寄りのモノづくりをしていたかと思えば、高校から大学にかけてはアメフト部で本気で日本一を目指していた。その中に映像制作がポンと入ってきて、いま仕事にされているというのが面白いですね。

趣味が音楽なんです。アンプを作りはじめたのも、音楽を良い音質で聞きたいと思ったから。でも生活のベースはスポーツにあって、大学4年間はアメフト部、学ランに坊主で練習は週に6日。日本一を本気で目指していました。一方で、“パソコンには強いヤツ”って周りからは思われていて。

映像をやりたいという気持ちは強くありました。いま考えると若いなって思うんですけど、週6で汗を流している真裏で、同年代の人が美大で教授から映像について教えてもらっている。そこに対するジェラシーはありましたね。自分で選んだので後悔はないし、ないものをねだってもな…という思いもあり、自分ができることで、どうやろうか、ってことばかり考えていました。

ー映像で食べていく、と決心するような、強く影響を受けたものはありますか?

よく影響を受けた映画などを聞かれるんですが、「これが好きで、こんなのを作りたい」っていうのは特にないんです。僕は就活をしませんでしたし、わからなかったんです。「日芸出身で映画やってました」「美大卒です」とかじゃないと、この業界には入れないと思っていたし、入り方もわからなかった。後ろ盾もなければ、有名なディレクターのアシスタント経験もない。普通には無理だけど、とりあえず何とかできるでしょ、と思って今に至ります。

ーyahyelとしての活動もあったからでしょうか?

そうですね。そこからの縁でサカナクションのマネージャーさんと出会って、映像業界の仕組みを教えてもらいました。「制作会社というのがあってね」とか。そういうことを知ったのも、この半年くらいの間。1年前は、全部自分でやっていました。カメラも照明機材のレンタルも自分で手配して、セットも自作。そういうものだと思っていたんです。

山田健人、yahyelを語る

yahyel – Iron|dir: Kento Yamada撮影は1日。演技指導のためにロケハン時に自身が演じ、Vコンを制作しそうだ

ーyahyelのMVは、ストーリー性のあるフィクションの作品が多いですね。

yahyelとは大学で友達になって、初めから映像を担当してきましたが、ファーストアルバムのリリース、ヨーロッパツアーやフジロックへの出演など、VJも含めたyahyelとしての活動が、自分の表現の場として重要になってきました。僕は、冷たくてあまり温かくない、そういう音楽や映像が好きだから、最初にVJをやった時からすごくフィットしています。MVも、メンバーと話し合いながら、自分のやりたい表現を割と出せる場所なんです。

美術セットにしても、僕はあまり無駄なものがないようにしたいと思っているんです。あ、無駄って言うよりも、音や世界観にハマっているものだけにしたい。yahyelだと、たとえばパフォーマンスで僕の占める割合が20%くらいだとしたら、音のパフォーマンスが80%で「足して100%」ではなくて、「彼らが100%を出した時に、僕が120%にできる」というのが理想。だから椅子を1つ置くにも、それがどういう椅子かによって印象や文脈が変わる。いかにハマるかを考えます。

ー最新作の「Iron」でやりたかった表現というのは?

この曲に関しては、ビジュアル先行で作曲されたピースなんです。コンセプト云々の前に、衝動的にフェチっぽく、こういう絵を撮りたい、っていうのがあって。それが、「足の爪を食べて、それを吐いたらそこから人が出てくる」というイメージでした。爪だけじゃなく、髪の毛や体毛など、あらゆるモノを削ぎ落としてピュアな状態になると、自分から裁ち落とされたものが立ち現れてくる、というのが撮りたいものでした。

そこから、楽曲に対して「ゆったり入って最後に爆発、みたいな構成や、こういう設定はどうかな? なぜならこういう映像が撮りたいから」と提案をしました。yahyelはファーストアルバム「Flesh and Blood」を出した後で、表現者はみんなそうだと思うんですけど、自分の作品が自分を拘束していくじゃないですか、良くも悪くも。少なくとも僕にはその感覚がすごくある。自分の手から離れた瞬間にもう自分のものじゃなくなっていて、勝手なタグ付けがされていく。yahyelだったら、自分たちは「洋楽っぽい音です」なんて一度も言ったことはありませんが、「洋楽っぽい」ってタグ付けされていく。そういう状況や気持ちを、衝動的に撮りたい画とコンセプチュアルに結びつけて、楽曲ができあがっています。

yahyel – Once|dir: Kento Yamada

ー山田さんも「いま旬の若手作家」とか「最も勢いのある映像作家」とか、タグ付けされていると思いますが、その辺の気持ちともシンクロした作品なんですね。

「Iron」は「憧れは何も生まない」というのがテーマ。このMVでは、裁ち落とされた爪や体毛から出来できた6人くらいのクローンに拘束されるんですよ。自分は拘束された状態で置き去りにされ、クローンたちは外に出ていってしまう。

1番、2番、ラストという3幕構成になっていて、1番はまだ独りしかいない。彼は「オリジナル」って呼ばれている。他にクローンと白い「ピュア」という存在がいます。オリジナルは創り手。彼はモノづくりの迷路で迷っていて、彼の理想の存在であるピュアと突然出会った。でも、オリジナルはピュアのことを上に見たり、背中を見たりして向き合えていないんです。彼は「理想」を自分の外に見ちゃっているから。本当は彼の中に存在しているのに。

2番に入るところでピュアという理想像を見つけ、ちょっとモノづくりの熱を取り戻すオリジナル。「爪を噛む」って表現をしています。それをピュッと吐いたら、クネクネってクローンが出てくる。彼は理想に近いものを生み落としたいと思っているのに、マガイモノしか生まれないんですね。それは、「憧れ」だけだから。手の爪がなくなって、足の爪にまで手を出すけど、全然追いつかない。焦燥感が彼を縛り上げていき、歌詞の「I just don’t want you to go(行ってほしくない)」、という箇所で、クローンはドアを開けて外に出て行ってしまうんです。タイトルの「Iron」は鉄や鋳型という意味合いですが、つまり「型」ですよね。型にはめていくだけでは、良いものはできない。しかも鉄というのはすごく硬い材質ですが、高温で一瞬で溶けてしまう脆い面もあり、2面的なコンセプトがあるんです。

最後に拘束されて、(クローンが)出て行った後に何で拘束を超えるかというと、yahyelの根源にある怒りやディストピアな価値観、シリアスでリアルな情景。拘束を爆発で超え、ピュアに最後に向き合った時に、怒りの炎が噴出して理想を超えていく。やっと自分も外に出て行けて、本当の創り手とは何かというところにたどり着くんです。

ー「オリジナル」のキャストはどのように探したのですか? すごくハマっていますね。

友人のヤンくん(jan and naomi〈ヤンアンドナオミ〉)に演じてもらいました。彼は元々、yahyelとも親しいので通じやすかった。彼もモノづくりの人なので、ロケハンの時に僕が一通り演じたVコンを見せて説明したら、すぐに理解してくれました。

ーyahyelのMVに日本人は登場しませんが、外国人をキャスティングする理由は?

ロケーションを含めて、無国籍なイメージを意識しています。外国人/日本人ということに意味を置かないようにしていて。もちろん日本で撮っていますが、いかに無国籍で抽象的な、フィクションの空間を作っていけるかを考えてのことなんです。今回も白人だけど、明らかな白人ぽくはない。できる限り、そういうキャスティングにトライしています。

yahyelとして欧米のオンタイムの音楽シーンでやっていきたいという目標があるので、映像もその次元にいなければと思っています。トーンや質感も、グローバルレベルのMVとして成立するかを常に考えています。

山田健人:映像ディレクター/VJ。東京出身。バンド「yahyel」のメンバー。慶應義塾大学法学部卒業。
同校大学院メディアデザイン研究科中退。「dutch_tokyo」名義でも知られる。

ーカメラは、いまでも自分でやることはあるんですか?

自分で(カメラを)回さない良さをこの半年で勉強できたので、どっちもいいなって思います。でも一方で、自分で回したい衝動もあって。いま一番ほしいカメラはRED。撮影で使うのは、予算に応じてREDかα(ソニーの一眼レフ)が多いです。「Iron」は、アミーラ(ARRI社のデジタルシネマカメラ)の質感で撮りたかったんですけど、お金がないので諦めました。

ーカラコレはどうしていますか?

自分でやることもあります。Premiereのカーブを使ってやっています。

ー初期の作品に比べると、演出のスケールもどんどん大きくなってきていますね。

できるだけアナログにこだわっています。(クローンの)手が出てくるところは、発泡ウレタンとコンドームとローションを使いました。板の裏に穴を開けて、手を出して作っています。そういうのは、事前に美術さんと検証をします。実は実験中に暴発して、Tシャツとジャージが発泡ウレタンまみれになってしまいました。「あー、本番じゃなくてよかった」って。そういうことが多いです。常に実験です。

ーよく一緒に組むチームがあるんですか?

チームではありませんが、カメラさん、照明さん、美術さん、制作さん、スタイリストさんやメイクさんは同じ人たちとやることが多いですね。yahyelについては、僕は気持ちが入っているし、でも予算はないので、正直みんなにかなり無理をしてもらってやっています。ライブに来てもらって、yahyelを好きになってもらって説得するしかない。でも、みんなが面白がって一緒にやってくれるので感謝しています。

ーyahyelの「Once」のような、映像技法をメインにした作品もありますね。

あれはフェチで言うと、「女の子の顔をグニャグニャにしたい」ということ。現実では無理だから、スリットスキャンをソフトウェア上でやりました。2011年製のMacBook Proを使っているので、1分作るのに5時間もかかって…しかも、トライ&エラーの連続。去年のフジロックに合わせてあのMVを作っていたので、時間も本当になかった。撮影も自分でオペレーションしたので、(カメラの重さで)腕もパンパンになりながら作った作品です。

ー作品群を見る限り、映像ギミック的な作品はあえて避けているのかと思っていました。

ギミックありきで考えることはしないです。必要かどうかです。アナログであれをやれるんだったらやりたかった。カメラの機種にしても、有効に使っていくために選択する。こうじゃないと嫌、っていうのはなないですね。

山田健人、Suchmosを語る

Suchmos – Stay Tune|dir: Kento Yamada

ーyahyelと同じく、MVの多くを手がけるているのがバンド「Suchmos」ですが、彼らを撮る時に意識していることは?

メンバー6人が魅力的に見えるかどうか。特にヨンスくん(YONCE、Vo.)とは長い付き合いで、高校生の頃、Suchmosの結成前に知り合いました。僕はいろいろ音楽を聞いていたし、高校生のバンドなんてちゃんとしてないと思っていたんですよ。でも、ヨンスくんは超カリスマ性があって、ステージで観て「うわ、こんなやばいヤツが一個上にいるんだ」って。で、仲良くなってから、「映像やってるんだけど、撮ろうよ」と提案して、そこからずっと。Suchmosを結成した時、日吉のカフェでメンバーを紹介されて「Suchmosってバンドを始めようと思うんだけど、なんか撮ってよ」って言うので、「どの曲でやる?」とって聞いたら「まだ1曲もない」って(笑)。その次元からずーっとライブも撮ってるし、ツアーも一緒に行っている関係なんです。

そういう長年の付き合いから、「彼らの魅力って何だろう?」と考えると、やっぱりステージにいる時が一番魅力的。音楽家はやっぱりそこかなって思うんですよね。

ーなので、MVにもパフォーマンスシーンがたくさん入っているんですね。

そうです。だからアングルもあおり気味なのが多い。ステージを観ている時って斜め下からじゃないですか。いかに彼らを美しく、格好良く、魅力的に撮るか。セクシーでクールに撮るか。これからも、音楽人としての彼らを僕が切り取ってアップデートしていきたいと思っています。

kana
bykana

NEWREELの編集者。コツコツと原稿を書く。