「耳で聞いたものはすべて信じるな。目で見たものは半分だけ信じろ」というエドガー・アラン・ポーの言葉が画面に映し出された後、ベッドから出てきた男女のシーンが始まる。
「もう話したくない?」
「いや、そういうわけじゃないけど……」
「出ていくわ。私は隠れない生活がしたいのよ」
これは、アンダーソン・パークのニューアルバム「Oxnard」に収録されているニューシングル「Tints」(ケンドリック・ラマーとのコラボ作品)の MV。歌に入ると、アンダーソン・パークがいろいろな役どころで裏の顔を持つ人たちを演じる。ケンドリック・ラマーとアンダーソン・パークの師匠でありプロデューサーのドクター・ドレーもちょい役で出てくる。
男(アンダーソン・パーク)を縛って車のトランクに閉じ込めている全米ライフル協会の模範市民的な老夫婦。彼らを職務質問した警官は札束らしきものを持ち歩いている。レジの金をちょろまかす食堂の店員。大勢の人間を殺戮したあとに子犬を可愛がる男。死期を迎えてもエロい覗き見ショーに通う病人。その客に股間を見せながらスマホで遊ぶショーの女。配車サービスの客を載せたままドリフトしまくる男。子どもを寝かしつけた直後にSM女王となる母親。父親に「おやすみ」を言った後にエロ動画をライブ配信する娘。それを見て興奮する医師。淫行にふける聖職者らしき男。薬物依存症のカウンセラーといった具合だ。
こんな人々の裏の顔を振り返り、最初の男は女に言う。
「いやぁ、お前には耐えられないと思うよ」
歌詞の内容は、パパラッチやら何やらがうるさいから車の窓にスモークフィルム(tint)を貼って人から見られないようにしたい、というもの。人にはいろいろな事情があるのだから、他人からじろじろ覗かれることなく自由にやりたいという話だ。
監督は、多くの MV や CM を手がけるコリン・ティリー。なかでも、2015年に MTV Video Music Awards 最優秀ビデオディレクション賞を受賞したケンドリック・ラマーの「Alright」の MV は、かなりの見応えがある。
コリン・ティリー監督のケンドリック・ラマー「Alight」
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