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【前編】大橋史、吉川和弥、関口和希と語る、アニメーション作品「君か君か」。白抜きのキャラクターデザインと感情移入させるアニメーション誕生秘話。

kana Dec 22 2021

ソニーのデザイナーとSF作家がコラボレーションし、Sci-Fiプロトタイピングの手法を用いて「2050年の東京」を短編小説として描き出すプロジェクト。その一遍の小説、麦原遼による「君か君か」は、未来の住居(HABITAT)をテーマにしたもの。そのコンセプトムービーとして制作されたアニメーション作品「君か君か」は、サイバーパンクな未来の世界を、グラフィカルなキャラクターデザインと、繊細なアニメーションによる心理描写で観る者の視線を釘付けにする。監督の大橋史、キャラクターデザインの吉川和弥、アニメーターの関口和希にその制作背景をインタビュー。前編ではキャラクターデザインを中心にお届けします。

dir
Takashi Ohashi
design
Kazuya Kikkawa
animation
Kazuki Sekiguchi
composition
Takashi Ohashi
voice actor
Hakushi Hasegawa, Mari Hino
music
SKYTOPIA
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キャラクターデザインの
開発過程を振り返る

──グラフィカルで、青い背景に白抜きというキャラクターデザインが、この作品を際立たせています。このデザインにはどういう過程を経てたどり着いたのですか?

大橋:色については、海の色=青色というテーマカラー企画段階で設定されていました。青を活かしたデザインという前提で、かずお君とトライ&エラーを繰り返していきました。

かずお:キャラクターデザインについて時系列で解説すると、人物設計を大橋さんから聞いての最初の提案がこちらです。

大橋:これはヒロインのヨリ、主人公のイチウが好きな人ですね。海上コロニーに留学をして帰ってくると感情を失っていたというキャラクター設定。原作の傘をもっている場面を拾ってかずおくんが描いてくれました。僕からは「テーマカラーの青をもっと活かして、デザインをミニマルにすることで、更に世界観が際立つんじゃないか」と、フィードバックをしました。

かずお:キャラクターと並行して、背景となる舞台のデザインも進む中、試行錯誤の末に次に出したキャラクターデザインがこちらです。


同時並行で進行中の背景のデザイン案

大橋:このバージョンは視線がないのが特徴的だよね。しかしシリアスな世界観において、まだ絵柄が甘いと感じました。もっと切迫感が作れないかなっていう話をしながら、リテイクをお願いしました。

かずお:対象年齢を上げたいよねって話をしていましたね。そこで”眼”の表現を探ってみたんです。

かずお:その時に出てきたのがこれです。

大橋:見た瞬間にこれだ!と思いました。お面をつけているようなデザインがいいですよね。仮面によって匿名性も出ます。ヨリもイチウも素体は同じなんだけど、動いた瞬間にパーソナリティが出ると面白いだろうなっていうアニメーションのアイデアも浮かびました。声優さんの演技もこのデザインからイメージが湧いてきました。

かずお:色についてもワントーンでもいけるんじゃないかと考えたのがよかった。始めは青色っていうテーマカラーをずっと拾ってきていましたが、合いそうな色を足してカラフルになすることで絵本のような印象になっていました。この時点から削いでいく気持ちでデザインをしたのを覚えています。

大橋:シルエットもシンプルだし作画の作業効率もこのデザインなら担保できる。

かずお:実利ともに三方良しですね。

──キャラクターを白抜きにしたアニメーション作品って珍しいですが、SiFiな世界観にすごく合っていますね。

かずお:ピクトグラムやアイコンのように、背景からぽっかりと浮いているように見せたいという意図がありました。グラフィックデザインで地図を作る時に「ここが公園です」って、ハイライトをするような絵作りや色の導き方でした。

──夜のシーンではそれが光を感じさせたり、魂の抜けた空虚さを感じる瞬間もあって、本当に三方良しですね。一方でロボットの「依代」は輪郭線がないデザインになっています。

かずお:人物や背景には輪郭線を描いていますけど、「依代」にはありません。キャラクターデザインの描き分けに関してですが、AIロボットの「依代」はホログラムで投影されて存在しています。人間ではないものはベタ面で、青色に対して補色となる黄色を使うことで、生物とは反対の存在であることをビジュアルで表現できるなと。アプローチを変えることの有効性はあったと思います。

大橋:全体のディレクションの方向性として前述した通り、デザインもアニメーションも、単純な色面の変化によって空間を作る手法にこだわっていますが、効果的に空間を生み出せたと思います。

──貴重なキャラクターデザインの変遷について解説いただきありがとうございました。後編ではアニメーションについて深堀りしたいと思います。

後編ではキャラクターアニメーションを担当した関口和希を中心にお話を伺います。同じ素体、シンプルな造形のキャラクターなのに、なぜこれほどまでにエモーショナルなのかを、探っていきます。近日公開予定。

PROFILE

大橋史|アニメーションディレクター

オーディオビジュアル、言葉、文字、図形譜をテーマにCGの有限性・限界線を意識したアニメーション表現の研究と作品発表をする。作品の多くは国内外のデザインカルチャーのマガジンや映像祭で上映・掲載され評価を受ける。近作に、花譜 「戸惑いテレパシー(柊キライRemix)」MV演出、長谷川白紙のライブVJ、DAOKO「ぼく」MV演出など。

吉川和弥|グラフィックデザイナー

グラフィックデザインを軸に色々制作。京都の自室から制作物をアップロードし続けている。座右の銘「公私混同」。

関口和希|アニメーション作家

多摩美術大学情報デザイン学科、東京藝術大学大学院映像研究科アニメーション専攻卒業。柔らかい描線で描かれたキャラクターによる手描きアニメーションを制作している。2018年よりフリーランス。日本アニメーション協会会員。

bykana

NEWREELの編集者。コツコツと原稿を書く。

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